PEST分析とは?
PEST分析とは、企業を取り巻く外部要因を調査する手段として提唱されたフレームワークで、Politics(政治)とEconomics(経済)、Society(社会)やTechnology(技術)の頭文字をとって名付けられました。
外部要因を把握することによって、今後の経営戦略や事業展開の方向性を見つけやすくなります。
PEST分析のPESTは、それぞれ複数の要因があります。
たとえば,
P(政治)なら、法律が改正されたり規制がかけられたり、また政権が交代したり外交政策が変わることも要因となります。
E(経済)では、インフレやデフレ、景気動向や金融指標、さらにはGDP成長率なども要因と考えられます。
S(社会)的な要因としては、人口や文化の変遷や同行、また教育やトレンド、犯罪なども事業展開に大きな影響を与えるでしょう。
T(技術)では、新技術の開発やそれに対する投資、グローバル化やM&Aなどが該当します。
フレームワーク
フレームワーク(framework)は物事を倫理的に思考するための枠組みという意味で使われています。状況や情報を的確に分析し、会社ごとに浮き彫りになった課題や方針へアプローチしていく手助けとなるものがフレームワークです。
PEST分析はなぜ必要なのか
企業が自社のビジネスを行うにあたって、外部の要因を全く受けないというようなことはまず考えられません。例えば今現在のコロナ社会がそうです。
2021年4月30日現在東京都、京都府、大阪府、兵庫県に緊急事態宣言が発令され、それに準じる蔓延防止措置法が各都道府県に適用されています。このような中で一番コロナ禍の打撃を受けているのが飲食業界でしょう。時短・休業要請を強いられ酒類の提供禁止を促されており、確実にコロナ前より業績は芳しくないはずです。
中には「政府の補助金があるからいいのではないか」という意見も聞こえてきますが、そもそも補助金が十分な額であるかは議論の余地があります。
つまりPEST分析のPoliticsとSocietyの部分が今のビジネス業界影響していることになります。
しかしながらコロナ禍でこそ急成長する業界もあります。例えば大学の授業や企業の面接、ミーティングにはZOOM、Skype等のオンラインコミュニケーションツールが高頻度で使用されています。このような時代だからこそ発展する業界もPEST分析で見つけることができます。
PEST分析により外部環境をより的確に分析することで自社の立ち位置、今後の進退を明確にすることができるのです。
PEST分析のやり方
なぜPEST分析をするのかを確認
まずはPEST分析の目標を確認しましょう。PEST分析は事業機会の獲得とリスク回避が主な目的となることが普通です。SWOT分析のOpportunity(機会)、Threat(脅威)と殆ど同義と言っても構わないでしょう。SWOT分析については概要を後述しておりますのでそちらをご覧ください。
PEST分析を行っていくための情報を集める
PESTの各要素(Politics,Economy,Society,Technology)についての情報を集めます。先ほど例にした飲食であれば簡単な物ですが下記のようなものになります。
P:外出自粛や商業施設・飲食の閉鎖要請
E:GDPの減少
S:コロナ
T:オンラインサービス技術の台頭
分析結果を機会とリスクに分離
分析したものが事業拡大進出に役立つものか、撤退を進める警告となるかを基準に分けましょう。
SWOT分析とは
SWOT分析とはフレームワークの一種で、自社の外部環境と内部環境を的確に分析し、ポジティブな要素とネガティブな要素とに分割してアプローチをかけていくことで経営戦略等の最適化(optimization)を図るフレームワークです。
SWOT分析はStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)それぞれの頭文字をとった造語になります。
SWOT分析のOとTはPEST分析で得られる結果とほぼ同義です。
外部環境分析
外部環境分析とは消費者の需要・ニーズを掴む分析をすることです。世間のトレンドは常に変化を繰り返し非常に不安定な状態にあります。世間の気運がどこに向かっているのかを的確に分析することで、世間・消費者が求める会社像を見出すことができるのです。
例を挙げて見ましょう。2019年にアメリカの州で初めて毛皮製品製造・販売を禁止したのがカリフォルニア州です。カリフォルニア州の例に習いその他の州も同法案を可決審議しているようです。国単位で見ればドイツ・ノルウェー・ベルギー等欧州で同じ運動が見られるようです。そんな欧州情勢の中で、レザー商品を声を大にして販売するとあまり聞こえは良くありません。それどころか同ブランド製品の不買運動が製造禁止国で起こる危険性も孕んでいます。つまり外部環境分析は自流と時流を適度に使い分けていく指標となるのです。
SWOT分析でいうOpportunity(機会)、Threat(脅威)がこれにあたります。
PEST分析の活用事例
PEST分析は、さまざまな企業で活用されていて、事業戦略に役立てられています。
例えばライフネット生命では、2015年から同性のパートナーでも生命保険の受取人として指定できるようにしました。この背景には、2015年に東京都内いくつかの区で施行された同性パートナーシップ制度をPolitics要因とするほか、社会的文化として同性カップルが増加している点をSociety要因とし、PEST分析によって保険契約改定を行ったわけです。
マイクロソフト社やインテル社などのパソコンメーカーでは、パソコンの普及が浸透したことをSociety要因、そしてIT技術の進化をTechnology要因とし、大きな飛躍を遂げることができました。同様に、アマゾンやGoogleなどのIT各社もまた、ネットの普及(S要因)とネットサービスの価格破壊や技術革新(T要因)によって大成功をおさめた事例と言えます。
事業計画を検討する上では、どのような大企業でもPEST分析を取り入れることは必要不可欠です。それにより、環境トレンドに乗って事業の安定化が図れるからです。
しかし、トレンドに乗れない場合には、大企業でも失敗する可能性はあります。例えば、過去にはフィルム業界でシェア1位を占めていたコダックは、写真のデジタル化(Technology)の波に乗り切れず、最終的には経営破綻した事例です。
まとめ
PEST分析は、企業を取り巻く外部要因を調査して把握することにより、今後の事業展開を検討する上で方向性を見つけやすくしてくれる分析方法です。
大切なことは、外部要因を把握したら、環境トレンドの波に乗れるような事業対策を見つけるということではないでしょうか。