ビジネスの課題解決や戦略立案の場で、「As is / To be」という言葉を耳にする機会が増えています。コンサルタントや経営企画、マーケティング担当者がよく使うフレームワークですが、「なんとなくわかるけど、実際にどう使えばいいの?」という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、As is / To be の意味・考え方の手順・具体的な活用事例・よくある失敗とその対処法まで、実務ですぐに使えるレベルで解説します。マーケティング戦略の立案、組織課題の分析、プロジェクト設計など、幅広い場面で応用できます。

「As is / To be」とは?基本の意味

As is(現状)とTo be(理想)の定義

「As is」は英語で「現在の状態のまま」を意味し、現状・現実を指します。「To be」は「あるべき姿・なりたい状態」を意味し、理想・目標状態を指します。

用語 意味 別の言い方
As is 現在の状態・現状 現状分析・現状把握・現在地
To be 理想の状態・あるべき姿 ゴール・目標状態・ビジョン
ギャップ As isとTo beの差分 課題・問題・改善余地

この2つを対比させることで、「今どこにいるか」と「どこに向かうべきか」が明確になり、そのギャップを埋めるための行動(課題解決策)が見えてくるのがこのフレームワークの本質です。

なぜAs is / To beが重要なのか

課題解決や戦略立案において、多くの失敗が起きる原因は「現状認識のズレ」と「ゴール設定の曖昧さ」にあります。

As is / To beのフレームワークは、この2つの問題を同時に解決します。

  • 現状(As is)を客観的に把握することで、思い込みや感覚ではなくデータや事実に基づいた議論ができる
  • 理想(To be)を先に明確にすることで、施策の方向性がブレなくなる
  • ギャップを可視化することで、優先すべき課題が特定できる

コンサルティングファームや戦略立案の現場では必須のフレームワークであり、マーケティング・HR・IT・経営戦略など、あらゆる領域に応用できます。

As is / To beの考え方と手順

ステップ①:To be(理想の状態)を先に描く

As is / To beのフレームワークには、To beから先に考えるアプローチAs isから先に考えるアプローチの2通りがあり、プロジェクトの性質によって使い分けるのがベストです。

アプローチ 適している場面
To be → As is 現状にとらわれず大きな変革を目指す場合。スタートアップや新規事業立案など
As is → To be 問題点が明確で現状を重視した解決策を取りたい場合。既存業務の改善・課題解決など

一般的には「まずAs is(現状)を正しく把握してからTo be(理想)を描く」が標準的なアプローチとして紹介されることが多いですが、「現状にとらわれず大きな変革を目指す」場合にはTo beから先に描く方が有効です。どちらが正解というわけではなく、目的に応じて選択してください。

To beを描く際のポイント:
– 「〇年後にどうなっていたいか」という時間軸を設定する
– 数値目標(定量)と状態目標(定性)の両方を書き出す
– 複数のTo beを列挙してよい。後で優先順位をつける

 

例(マーケティング部門の場合):
– 月間リード数が現在の3倍になっている
– Webサイト経由のCV率が2%を超えている
– ブランド認知度が業界内でトップ3に入っている

ステップ②:As is(現状)を客観的に把握する

To beを描いたら、次に現状(As is)を正確に把握します。ここで大切なのは「あるべき姿と比較しながら現状を見る」という視点です。

 

As isを把握する際のポイント:
– 感覚や印象ではなくデータで記述する
– 「誰が見ても同じ現状認識を持てる」レベルで書く
– ポジティブな現状もネガティブな現状も、フラットに書き出す

 

例(マーケティング部門の場合):
– 月間リード数:300件/月(目標の33%)
– Webサイト経由のCV率:0.8%
– ブランド認知度:業界内でのポジションが不明確

 

ステップ③:ギャップを特定し、原因を掘り下げる

To beとAs isが揃ったら、その差(ギャップ)を可視化します。そして「なぜそのギャップが生じているか」を掘り下げることが、このフレームワークの核心です。

ギャップの原因分析には、以下のフレームワークを組み合わせると効果的です。

補助フレームワーク 用途
Why分析(なぜなぜ分析) 根本原因を深掘りする
MECE 原因を漏れなく・ダブりなく整理する
3C分析 顧客(市場)・競合・自社の観点で原因を整理する
SWOT分析 強み・弱み・機会・脅威で整理する

ステップ④:ギャップを埋めるアクションを設計する

原因が特定できたら、具体的な施策・アクションに落とし込みます。このとき、優先度・担当・期限を明確にすることで、実行可能な計画になります。

項目 内容
What(何を) 実施する施策の内容
Why(なぜ) 特定したギャップ・原因との対応関係
Who(誰が) 担当者・担当部署
When(いつまでに) 期限・マイルストーン
How much(どのくらい) リソース・予算感

As is / To beの活用事例

事例①:高速道路の制限速度変更

As is / To beの活用事例として、道路の制限速度変更がわかりやすい例です。

現状(As is)として制限速度が100km/hの高速道路に対し、輸送力向上を目的として120km/hへの引き上げが提案された場合を考えます。

項目 内容
As is(現状) 制限速度100km/h
To be(理想) 制限速度120km/h・輸送力向上
ギャップの原因 安全基準・車両性能・道路設備の現状
分析の論点 現状の安全基準は本当に限界か? 車両性能向上で変更可能か?

このギャップには単純な数値の差だけでなく、安全性・車両技術・インフラ整備状況など複数の要素が絡み合っています。As is / To beで整理することで、感情論ではなく構造的な議論ができるようになります。

引用:写真AC

事例②:BtoB企業のリード獲得強化

デジタルマーケティングの現場での活用例です。

項目 内容
As is(現状) 月間リード数150件、うちWeb経由30件(20%)。営業への引き渡し率40%
To be(理想) 月間リード数300件、Web経由150件(50%)。営業への引き渡し率60%
主なギャップ Web流入量の不足、ランディングページのCV率低下、リードナーチャリング未整備
施策例 SEO記事強化・LP改善・MA(マーケティングオートメーション)導入

「リードを増やしたい」という漠然とした課題を、As is / To beで構造化することで、どの施策から手を付けるべきかの優先度が明確になります。

事例③:組織・人材育成への活用

HR・採用・組織開発の領域でも広く使われています。

まず、As isの理由としては、 「交通事故を防止する」 という安全面の理由が挙げられます。 そして、To beの理由には、 「自動車の安全性能や品質が高まったというものや、制限速度を上げることで輸送力が高まる」 などが考えられます。 突き詰めると、現状が限界なのか、それとも向上の余地があるのか、という論点になるでしょう。 「As is」と「To be」の考え方で分析をする事で、自動車の性能や道路事情なども踏まえた論議を行いやすくなります。

項目 内容
As is(現状) 中途採用比率70%、新卒定着率60%、管理職の平均年齢45歳
To be(理想) 新卒育成ルートの確立、5年以内に次世代管理職候補10名を育成
ギャップの原因 育成プログラムの未整備、OJT担当の負荷過大、評価基準の不明確さ
施策例 研修プログラム設計、メンター制度導入、評価制度の見直し

事例④:デジタルマーケティング戦略の立案

デジマールがクライアント企業の支援で活用するAs is / To beの典型的な使い方です。

現状のマーケティング体制・予算・成果指標を「As is」として整理し、12ヶ月後に目指す状態を「To be」として設定。そのギャップから逆算して、広告運用・SEO・SNS・MA導入などの施策ロードマップを設計します。

「何となく広告費を増やしてみた」「流行っているからSNSを始めた」という場当たり的な施策ではなく、ゴールから逆算した一貫性のある戦略を持つことで、マーケティング投資の効率が大きく改善します。

As is / To beを使う際のよくある失敗と対策

失敗①:As isの分析に時間をかけすぎる

「現状分析が完璧でないと次に進めない」という考え方から、As isの整理だけに数週間・数ヶ月かけてしまうケースがあります。

対策: To beを先に仮設定してから、「そのTo beとのギャップを明らかにするために必要なAs is情報は何か」という逆算で現状分析の範囲を絞る。完璧を目指すより「意思決定に必要な情報が揃ったか」で判断する。

失敗②:To beが抽象的すぎる

「売上を上げたい」「顧客満足度を高めたい」という曖昧なTo beでは、ギャップも施策も具体化できません。

対策: To beは「誰が見ても同じ状態がイメージできる」レベルまで具体化する。定量目標(数値)と定性目標(状態)の両方を書く。例:「2年後に月間リード数500件・CV率2%・顧客単価150万円を達成している状態」

失敗③:ギャップの原因を表面的にしか分析しない

「リードが少ない」→「広告費が足りない」という短絡的な因果関係だけで施策を決めると、本質的な課題を見逃します。

対策: なぜなぜ分析やMECEを組み合わせて、根本原因(ルートコーズ)まで掘り下げる。「広告費が足りない」の背後に「ターゲット設定のズレ」「クリエイティブの品質問題」「LP改善の未実施」などが隠れていることが多い。

失敗④:As is / To beを一度作って終わりにする

市場環境や組織の状況は変わります。一度設定したTo beが半年後も正しいとは限りません。

対策: 四半期ごとなど定期的にAs is / To beを見直すサイクルを設ける。施策の進捗を確認しながら、必要に応じてTo beの修正や施策の組み替えを行う。

As is / To beと他のフレームワークとの組み合わせ

As is / To beは単体でも有効ですが、他のフレームワークと組み合わせることでさらに強力になります。

組み合わせ 効果
As is / To be + MECE ギャップの原因を漏れなく・ダブりなく整理できる
As is / To be + 3C分析 顧客(市場)・競合・自社の観点でギャップを構造化できる
As is / To be + KPI設計 To beを数値目標に落とし込み、進捗を管理できる
As is / To be + ロードマップ ギャップを埋めるステップを時系列で可視化できる
As is / To be + OKR 組織全体で目標と現状のギャップを共有・管理できる

特にマーケティング戦略立案では、3C分析(顧客・競合・自社)でAs isを整理 → KPI設計でTo beを定量化 → ロードマップで施策を可視化という組み合わせが実践的です。

よくある質問(Q&A)

Q. As isとTo beは誰が設定すべきですか?

A. 理想的には関係するステークホルダーが一緒に設定することが重要です。経営層だけが決めたTo beは現場に伝わらず、現場だけが決めたTo beは経営方針と乖離するリスクがあります。ワークショップ形式で複数の関係者が参加して設定することをおすすめします。

Q. As is / To beとGAP分析は同じですか?

A. 厳密には同義ではありません。As is / To beは「現状定義 → 理想設計 → ギャップ特定 → 改善実施 → モニタリング」という全体フレームワークを指します。一方、GAP分析はその全体フレームワークの中でAs isとTo beの差異を数値・構造で明確化する一つのステップ(手法)です。「フレームワーク全体」と「その中の一手法」という「部分と全体」の関係にあります。

Q. To beはどのくらいの時間軸で設定すべきですか?

A. 目的によって異なりますが、一般的には中期(3〜5年)短期(1年以内)の2段階で設定することをおすすめします。中期To beで大きな方向性を示し、短期To beで具体的な達成目標を設定することで、日常の施策と長期ビジョンが繋がります。

Q. 個人のキャリアや目標管理にも使えますか?

A. 非常に有効です。「現在のスキル・実績・状況(As is)」と「3年後になりたい姿(To be)」を書き出し、ギャップを埋めるための学習・行動計画を立てることで、キャリア開発に応用できます。

まとめ

As is / To beフレームワークのポイントをまとめます。

  • As is = 現状。データと事実に基づいて客観的に把握する
  • To be = 理想の状態。As isより先に設定するのが正しい順番
  • ギャップ = 課題の本質。表面的な差だけでなく原因まで掘り下げる
  • 活用手順:To beを描く → As isを把握する → ギャップを分析する → アクションを設計する
  • よくある失敗:As is分析に時間をかけすぎる・To beが抽象的すぎる・原因分析が浅い
  • 組み合わせ:MECE・3C分析・KPI設計・ロードマップと組み合わせると効果が増す

このフレームワークは、マーケティング戦略・組織課題・IT導入・個人のキャリア設計まで、あらゆる「現状から理想へ」の変革に応用できます。

デジマールでは、クライアント企業のAs is / To beを一緒に整理し、デジタルマーケティング戦略の設計から実行まで一貫して支援しています。「何から始めればいいかわからない」という段階からご相談いただけます。

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