情報の非対称性とは?
ビジネスにおける情報の非対称性とは、市場において各取引主体が持っている情報に差があるという状況を表します。ある商品を「売る側」は、専門的な知識を有しているにもかかわらず、「買う側」はその知識を持ち合わせていないというように、2者間で情報や知識の共有が成り立っていないという状況です。例えば、ある商品を売る側は、材料や製造プロセスといった品質に関する情報を豊富に持っています。それとは対照的に買い手側は、品質に関わる詳細な情報は持ち合わせていません。知りたければ購入時に売り手側に確認して説明を求めるよりないでしょう。仮に説明を求めたとして正確な詳細情報を共有してもらえる保証はありません。このように取引において、保有している情報が参加者間で台頭でないゆえに「情報優位側」と「情報劣位側」が存在している状況が、情報の非対称性です。
情報の非対称性の活用事例
江戸時代の商人であった紀伊国屋 文左衛門は、情報の非対称性を活用することによって成功した歴史上の経済人として知られています。紀伊国屋 文左衛門の人物像についてはなぞに包まれている部分が多く情報が十分に残っていないため、伝説の人物で実際には存在しなかったとする意見もありますが、実在の人物であるという説が主流です。文左衛門は、同じ木材でも江戸と紀伊の国で場所が変わると価格も変わることに着目しました。それで、安い地区で仕入れを行い、それを価格が高い地区で売ることによって財を築き上げたのです。なぜ、このようなことが成立したのかというと、紀伊国屋 文左衛門は紀伊の国での木材相場価格を把握していましたが、江戸の商人は知りませんでした。この「売り手」と「買い手」間に起こっていた情報の差を利用して利益を上げていったのです。
情報の非対称性を活用した現代のビジネスモデルにコンビニコーヒーがあります。今でこそ、どこのコンビニにもワンコインでカップを買ってマシンで抽出するコーヒーを飲めますが、10年前にはそのような光景は見られなかったでしょう。しかし、アメリカではすでにコンビニでマシン抽出のコーヒーは当たり前の商品でした。この海をまたいだ地域の違いという情報差を活用して、アメリカでは知られていて日本では知られていないコンビニコーヒーを日本に持ち込んで成功したというビジネスモデルです。
まとめ
情報の非対称性を活用することによって新たなビジネスにつなげることもできれば、すでに提供している商品やサービスにおいて、この状況が発生すると失敗につながることもあります。例えば、クレームの原因になったり、リピート客が増加しない、顧客が定着しないといった現象が起こり得ます。それで、情報の非対称性の特性と影響力を理解して経営戦略に活用しましょう。