1.マーケティング4.0とは?
マーケティングの概念の中でも近年注目されているものに、マーケティング4.0があります。コトラーという経営学者が提唱している理論です。1950~70年代に生まれたマーケティング1.0、1990年代ごろから始まったマーケティング2.0、1990~2000年代に生まれたマーケティング3.0に次ぐコンセプトです。
マーケティング4.0の目的は一言で表現すると、自己実現です。これまでは顧客の自己実現欲に訴えることが、マーケティングの目的でした。しかしマーケティング4.0では、社員それぞれが何をしたいかをベースに会社全体で作りたい製品を開発する手法です。
マーケティングミックスというと従来は4Pでした、これはProduct・Place・Price・Promotionの4つのPです。しかしマーケティング4.0では4Cが提唱されています。Co-creation(共創)・Currency(通貨)・Communal Activation(共同活性化)・Conversation(会話)の4つです。
共創はCSVの概念にも相通じるところがあります。CSVとはCreating Shared Valueと言って日本語に訳すと「共有価値の創造」になるからです。
2.フィリップ・コトラーとは?
マーケティング4.0を提唱しているフィリップ・コトラーは、経営学者として有名な人物です。1968年に「マーケティング・マネジメント」という書籍を出版して話題になりました。伝統的なマーケティング理論を整備し、マーケティングの歴史を作った人物と言われています。
また伝統的マーケティングだけでなく、デジタルマーケティングの統合も提案しています。カスタマージャーニーのフレームワークとしてAIDAやAIDMAが伝統的に有名です。これに対して彼は5Aというデジタル時代におけるカスタマージャーニーを提案したことで業界では話題になりました。
3.マーケティング4.0における自己実現とは?
マーケティング4.0では、社員それぞれの自己実現をベースにしています。では具体的に自己実現とは何を指すのか、そこにはマズローの欲求段階説と共通する部分があるといいます。
マズローの欲求5段階説
アメリカの心理学者のマズローは人の欲求を5段階に分類しています。睡眠欲や食欲をはじめとした生理的欲求、安心・安全な暮らしを標榜する安全欲求、仲間が欲しい社会的欲求、周りに認められたい承認・尊厳、あるべき姿になる自己実現欲求の5段階です。
マズローによると、最終段階が自己実現欲求です。生活環境が整い、人々に囲まれ、価値ある存在と思ってもらえたと確信したところで自分自身をより成長させたいという欲求から自己を追求していくわけです。
自己実現を求める購買とは?
現在は物があふれています。何か欲しいものがあれば、けっこう簡単に手に入りませんか?このような状況で、人々は自己実現を求めていきます。
マーケティング4.0の中では、人々の生活や価値観の変化に柔軟に対応することが求められています。特にデジタル技術が進化したことを加味して、今後マーケティング戦略を立てていかないといけません。
4.マーケティング4.0の5Aとは?
コトラーはマーケティング4.0時代において5Aという新しいフレームワークを顧客購買プロセスで見出しています。5Aの枠組みは以下の5つのAから構成されています。
AWARE(認識する、知る)
まずは情報として商品やサービスを認識するところから始まります。
APPEARL(記憶や印象に残る)
そして見た人々がその存在を記憶として残していきます。強い印象があれば記憶にも残りやすいです。
ASK(調べる)
その存在が気になると人に聞いてみる、インターネットで評判をチェックするなど調べる活動が始まります。
ACT(購入する)
評判を見て納得できれば、その商品を購入したりサービスを利用したりします。
ADVOCATE(周りに勧める)
もしその商品がよければ、周囲に進める段階に移行します。SNSの普及によって、個人でも簡単に情報発信できるようになりました。
5.マーケティング4.0の成功事例
マーケティング4.0の成功事例を見てみると、世界的なメーカーが積極的に導入していることがわかります。例えば世界的なコンピューターメーカーでは、これまで革新的な技術を導入した製品を多く発売してきました。
余分な機能をそぎ落とすことで、顧客の心を反映させたようなシステムやフォルムを確立したことで一つのステータスを確立しました。
また有名スポーツメーカーでは、世界のトップアスリートに製品を使用してもらうマーケティング戦略をとっています。そして顧客に「あの憧れのアスリートが使っているから」ということで購買意欲を高めるフレームを確立しました。
同じモデルを身につけることで「あこがれのアスリートに近づいた」と感じ、自己実現欲の実現に至ります。ブランディングを高めるだけでなく、ユーザーの価値を上げることにも成功した事例のひとつと言えます。
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