ランチェスター戦略とは

ランチェスター戦略とは、戦力の劣る「弱者」がどのように「強者」と競争していくのかという戦略のことです。

この戦略は第一次世界大戦中に生まれた戦争のためのものでしたが、現在ではマーケティング理論として用いられています。

特に国内企業の99.7%が中小企業とされるビジネスにおいて、「弱者」が「強者」にどう立ち向かうかは重要な戦略になっています。

 

この理論はF.W.ランチェスターが提唱したもののためランチェスター戦略と呼ばれています。


フレデリック・ランチェスター

イギリス人の自動車工学・航空工学のエンジニアです。第一次世界大戦中にピタゴラスの定理をもとに、2つの軍事的法則・ランチェスターの法則を提唱し、これが第二次世界大戦中に米国海軍作戦研究班で研究され、戦闘に応用されています。


 

ランチェスター戦略を理解するには、「弱者の法則 (第一法則)」、「強者の法則 (第二法則)」を知る必要があります。

ランチェスター戦略では、マーケットシェアで強者と弱者を定義づけます。

マーケットシェアとは市場を複数企業で分け合ったときの市場占有率のことです。つまり、特定の商品・サービスの販売実績が市場のどのくらいを占めているかを確認することでシェア率を算出し、今後の営業戦略を構築するベースとします。マーケットシェアの算出方法は『売上÷市場規模×100%』です。この市場規模とは、提供する商品・サービスのマーケットサイズを商圏人口で掛け算した値です。

シェアが最も大きい企業を強者シェアが2位以下の企業を全て弱者とします。これは企業規模の大小に関係ありません。どれほどニッチなサービスでも、シェア率を一番取れていればそれが強者です。

 

弱者の戦略 (第一法則)

弱者の戦略と呼ばれている第一法則は、強者への差別化戦略になります。同じ武器を持つ兵士が対峙した場合、戦闘による消耗率は同じで、兵士の数の差が戦果に現れると考えます。

つまり、10人:8人の戦闘なら、最終的に数の多い方が2名生き残るという理論です。ここでは、弱者とされる小規模のビジネスの戦略を考えてみましょう。

局地戦

営業エリアに大資本企業が参入してきたとします。社員の人数で劣る地元の中小企業は、提供する商品・サービスの質を高めることが必要です。営業エリアを熟知しているという『地の利』を活かして、局地戦に徹することで大企業の戦力を減らすことが重要です。

一点集中

営業エリア内の販売ターゲットを丁寧に絞り込んで、集中的に販売戦略を実践します。守備範囲を広げずに、一点集中のセールスを仕掛けることで、兵力の弱さをカバーすることができます。

一騎打ち

局地戦で一点集中の営業をかければ、あとは白兵戦の実力がモノを言います。営業マンがもつ武器(セールス・ツール)を最適化し、実践的な研修やスキルアッププログラムも実施します。また、営業マンのポテンシャルを高めるために、休暇や勤務時間に自由度を与えるなどの内部施策が有効となります。

強者の戦略 (第二法則)

第二法則は『集中効果の法則』といって、広域戦・遠距離戦での兵法理論を解いています。現在においても、大企業やリーディングカンパニーが実践している戦略は、弱小企業の功績を真似し、それを資力と人海戦術で広範囲に展開するものです。

資力・戦力で圧倒している強者は、局地戦には持ち込まずに、広域に営業を拡散させて広く利益を上げる戦略が効果的です。

確率戦

第二法則では、『戦闘力=武器効率(商品・サービスの質)× 兵力数の二乗(営業力)』として戦力を計算します。同等の武器効率である営業チームの場合、10人のチームと5人のチームでは兵力の2乗の差に比例します。この計算では、8人分の差が出ます。

そこで、大手企業は競合数の多いステージに参入し、豊富な品揃え・系列内競合で販売力を増幅させて競争に勝つことが可能です。

広域戦

自動車業界でも最大手企業は保守的な戦略を重んじ、2番手以降の企業は攻めの戦略で立ち向かいます。

そこで一番手の企業が他社と同レベルの商品クオリティを発揮して販売競争を仕掛ければ、販売力で優るために広域戦に持ち込むことで圧勝します。そこで、一番手の企業は商品を模倣・追随といった方法で、じっくりと開発すれば良いのです。

遠隔戦

大手企業は直営店や系列店を利用して、拠点を置いていない地域でも販売競争を仕掛けられます。資金力とブランド力で大々的に広告を打ち、消費者へ購買意欲を植え付けておいて系列店などで販売を促進する遠隔戦が有効となります。

まとめ

このように、ランチェスター戦略とは本来戦争で用いられていた戦略になります。ビジネスではマーケットシェア2位以下を弱者、1位を強者とすることでこの理論を応用し、それぞれの戦い方を見つけることに活かされています。