ハインリッヒの法則とは?

ハインリッヒの法則とは、1930年にアメリカ人のハインリッヒ氏が提唱した労働災害の経験則です。労働災害を5,000件以上調査した氏が、そのデータをもとに、統計学的に労働災害をまとめました。

その内容は、1件の重大事故や重大災害の発生には、その背後に29件の軽傷を伴う軽微な事故や災害があり、さらに、その背後に300件のヒヤリハットがあるというものです。ここから、ハインリッヒの法則を「1:29:300の法則」や「ヒヤリハットの法則」とも呼んでいます。

アメリカで発表後、ハインリッヒの法則は同国を始め、さまざまな労働現場において、事故に対する注意喚起に活用されてきました。日本でも1951年にハインリッヒ氏の著作が翻訳されたことで、リスクマネジメントに活用できるとして一気に広まりました。今では、建設、製造、運輸、医療など、さまざまな領域で活用されている法則です。

ハインリッヒの法則の活用事例

医療現場におけるハインリッヒの法則の活用事例を見てみましょう。この分野は技術の進展が急速であり、常に最新の機器や医薬品等が現場で用いられています。そのため、医療に従事する医師や看護師に求められる知識や技術は日々高度化するとともに、業務内容も多様化するのが避けられません。そのため、専門ごとに職種が細かく分類され、それに伴い、職種間での密接な連繋が重視されるようになりました。

こうした状況が医療従事者を忙しくするとともに、焦りをもたらすようになりました。加えて、業務量が増加したことによって、ヒューマンエラーが起こりやすい環境であることにも留意すべきです。

そこで、厚生労働省は医療現場の安全対策に、ハインリッヒの法則を応用したヒヤリハット運動を取り入れました。それが2001年のことです。医療従事者が就労中に感じたヒヤリやハッとしたことをマニュアルにまとめ、それを共有することで、危険を未然に防ごうという取り組みです。

この取り組みは実際、大きな成果を上げています。医療現場では、処置や投薬のうっかりミスなど、ちょっとした間違いが重大事故につながることがありますが、そうしたヒヤリハットの瞬間をマニュアル化して整備することで、起こるはずだった医療事故を未然に防いでいるのです。

類似の法則

パレートの法則

パレートの法則とはイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(Vilfredo Pareto)によって発見された法則であり、「全体の2割の要素が全体の8割の成果を生んでいる」という法則です。パレートの法則は、「80:20の法則」「2:8の法則」「ばらつきの法則」と呼ばれることもあります。

  • 会社の売り上げの8割は2割の従業員によって生み出されている。
  • 会社の売り上げの8割は2割の顧客によって生み出されている。
  • 仕事の成果の8割は、かけた時間の2割で生み出されている。
  • 機械故障の8割は、全部品の2割によって生じている。

2021.03.29

2023.05.12

シラバス 編集部

 

バードの法則

1969年に、約200万件のデータから導き出されたバードの法則が発表され,アメリカの約300社、約200万のデータから「ニアミス:物損事故:軽傷事故:重大事故=600:30:10:1」という比率が示されました。1件の重大事故の裏に10件の軽い事故、さらに軽い事故の裏には30件の物損事故、その裏には600件のニアミスがあるというものです。

まとめ

ハインリッヒの法則はさまざまな分野で活用されていますが、医療現場のヒヤリハットは中でも知名度が高いです。重大事故を未然に防ぐための実際的な対策として、今後も毎日の取り組みとして用いられていくでしょう。