アプリのマーケティング担当者にとって、ユーザー獲得やエンゲージメント向上は重要な課題です。そのため、多くの企業がLINE広告を活用しています。しかし、「SDKをどう導入すればいいのか」「どのようにアプリキャンペーンを実行したらよいのか」「iOSのプライバシー変更での影響はあるのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
本記事では、LINE広告で利用可能なSDKの種類や連携方法を解説し、アプリインストール数やエンゲージメントを向上させるためのポイントを詳しく紹介します。また、iOS14.5以降のSKAdNetwork対応についても触れ、最新の広告戦略についてもお届けします。
執筆は豊富なLINE広告運用実績を持つデジマールの社員が担当。
この記事を読むことで、LINE広告のSDK連携について理解し、アプリのインストール数やエンゲージメントを効果的に向上させる戦略を把握できます。
SDKとは
SDK(Software Development Kit)とは、特定のプラットフォームやサービス向けのアプリケーションを開発・運用するためのツールキットです。SDKにはさまざまなものがありますが、本記事ではアプリ計測用に利用されるSDKを指して解説していきます。
LINE広告で自社アプリのプロモーションを行った場合、広告主はユーザーがアプリストアに遷移したところまでしか追うことができません。そのため、広告を通してアプリがインストールされた数など正確な広告効果を測定することができないのです。
しかし、SDKを連携すれば、様々なアプリ内イベントを計測することが可能になり、広告効果の分析や改善に役立つデータを取得できます。
LINE広告で対応しているSDK
LINE広告で対応しているSDKは、Adjust、AppsFlyer、Kochava、Singular社のSDK、の4つです。(SingularのSDKは、インストールイベントのみ計測が可能です。)
Adjust、AppsFlyer、Kochavaの3つは国際的にも活用されている主要な計測SDKです。また、どのSDKを利用しても、インストールやアプリ起動など計11イベントの効果計測が可能です。
しかし、最適なSDKの選定は、アプリの規模、マーケティング目標、予算などによって異なります。 それぞれのSDKの機能やサポート体制、料金などを比較検討し、自社のニーズに最適なものを選択することが重要です。各SDKプロバイダーのウェブサイトを参照し、詳細な情報を確認することをお勧めします。
SDKで測定される11のイベント
計測可能なイベントの一例を以下に示します。
イベント |
計測時点 |
オープン |
アプリが起動された時点 |
アプリインストール |
ユーザーがアプリをインストールした時点 |
ホーム閲覧 |
ユーザーがアプリのホーム画面を表示した時点 |
カテゴリ閲覧 |
ユーザーがアプリ内の特定のカテゴリを表示した時点 |
商品閲覧 |
ユーザーがアプリ内の特定の商品詳細画面を表示した時点 |
検索 |
ユーザーがアプリ内で検索機能を使用した時点 |
カート追加 |
ユーザーが商品をカートに追加した時点 |
購入 |
ユーザーがアプリ内で商品を購入した時点 |
レベル達成 |
ユーザーがアプリ内で特定のレベルに到達した時点 |
チュートリアル完了 |
ユーザーがアプリのチュートリアルを完了した時点 |
カスタム |
上記以外の、ユーザー定義のイベント |
これらのイベントを正確に測定することで、LINE広告の効果を最大限に引き出し、アプリの成長を促進することができます。
どのイベントを計測するかは、アプリの目的やビジネスモデルによって異なりますが、重要なKPIを特定し、それらに関連するイベントを計測するように設定することが重要です。
LINE広告でのSDK連携方法
LINE広告SDKを連携することで、アプリ内でのユーザー行動を正確にトラッキングし、効果的な広告運用を実現できます。連携方法はSDKの種類によって多少異なりますが、基本的な手順は共通しています。
ここでは、SDK連携の一般的な手順をまとめます。
1.アプリの登録
1-1. 広告管理画面の左上にある「≡(MENU)」から「共通ライブラリ」内の「メディア」を選択します。
1-2. 「アプリ」タブを開き、「+アプリを追加」をクリックします。
1-3. OS(iOSまたはAndroid)を選択し、アプリ名とApp StoreもしくはGoogle PlayのURLを入力して登録を完了します。
(参考:※1)
2.SDKの連携
選択した計測SDK(Adjust、AppsFlyer、Kochava、Singularのいずれか)をアプリに組み込みます。
各SDKの設定手順や必要なパラメータは異なるため、詳細は各社のガイドラインを参照してください。
AndroidとiOSで手順が異なる場合があるので注意が必要です。
3.IDの設定
LINE広告の管理画面で発行された「広告アカウントID」と「アプリID」を、導入したSDKの管理画面に設定します。
アプリIDとは、管理画面左上「≡(MENU)」>「メディア」より、登録されたアプリの「ID」欄に記載されている赤枠のIDのことです。
各SDKの「広告アカウントID」と「アプリID」の表記は以下のとおりです。
管理画面表記 |
Adjust |
AppsFlyer |
Kochava |
広告アカウントID |
AdvertiserID |
LINE_Ad_account_id |
ADVERTISER ID |
アプリID |
Mobile AppID |
LINE_Ad_app_ID |
MOBILE APP ID |
これ以降の、リンク先URLの設定やビュースルーコンバージョン計測の設定については、「LINE広告アプリキャンペーンの配信方法」の「広告の作成」の項目で解説します。
(参考:※2)
LINE広告でアプリインストールやエンゲージメントを増やす配信方法
LINE広告を活用してアプリのインストール数やユーザーのエンゲージメントを向上させるためには、LINE広告のアプリキャンペーンを活用することが効果的です。以下では、アプリキャンペーンの設定方法と入稿規定を解説します。
LINE広告アプリキャンペーンの設定方法
ここでは、アプリキャンペーンの配信設定時に特に気をつけるべき設定場所をピックアップして、解説します。
全体的な設定方法については、「【画像付き】LINE広告の配信方法|始め方・出し方を徹底ガイド」をご覧ください。
1.キャンペーンの目的設定
LINE広告管理画面で新しいキャンペーンを作成する際、目的を「アプリのインストール」または「アプリのエンゲージメント」に設定します。自社のアプリのインストール数を増加したい場合は「アプリのインストール」を、アプリの起動回数などインストール後の特定の行動を促したい場合は「アプリのエンゲージメント」を選択します。
2.広告グループの作成
キャンペーン作成後は、広告グループを作成していきます。手順は以下のとおりです。
2-1. アプリ設定(未登録であればアプリを登録)
2-2. ターゲティング設定
アプリの登録後、ターゲティングを設定します。最初は広めのターゲティングを設定し、データ収集後に絞り込むことを推奨します。
2-3. 配信先の設定
多くのユーザーに広告を表示できるため、「自動配置」の選択が推奨されています。
2-4. 入札設定
[入札単価の設定方法]は「自動入札」で、[入札戦略]は「イベント単価の上限を設定」を選択することが推奨されています。
2-5. 予算設定
1日の予算は、目標CPI(Cost Per Install、1人のユーザーがアプリをインストールするためにかかる費用)と1日に獲得したいインストール数から算出します。目安は、目標CPIの5倍以上です。
(参考:※3)
3.広告の作成
「入稿規定」に従い、クリエイティブを作成し、入稿します。
入稿時の設定項目は以下の表の通りです。
設定項目 |
説明 |
動画、または画像 |
メディアに登録した動画、または画像から選択してください。この画面からメディアに登録することもできます。 (課金方式がクリック課金である場合、「動画」は選択できません。) |
タイトル |
20文字以内で入力してください。 |
ディスクリプション |
75文字以内で入力してください |
ボタン |
目的に応じたアクションボタンを選択してください |
アプリ |
広告グループで選択したアプリが自動で選択されます。 |
遷移先 |
ユーザーを遷移させるURLを入力してください。アプリストアではなくウェブサイトに遷移させる場合はランディングページに入力してください。 エンゲージメント目的の場合は、アプリをインストール済みか否かでそれぞれ設定することができます。 |
リンク先URL(任意) |
SDKから発行された計測用のURLを入力してください。 |
インプレッションURL(任意) |
ビュースルーコンバージョンを測定したい場合は、インプレッションURLを設定します。 インストール目的かつ動画配信の場合のみ入力でき、Adjust、Appsflyerのみの計測対応です。 |
(参考:※4)
LINE広告アプリキャンペーンを実施する際のポイント
LINE広告を活用してアプリのインストール数やユーザーエンゲージメントを効果的に向上させるためには、以下のポイントを考慮することが重要です。
ポイント① モバイルアプリオーディエンスを活用する
モバイルアプリオーディエンスとは、特定のアプリをインストールしているユーザーや、アプリ内で特定の行動を取ったユーザーをターゲティングする手法です。これにより、既存ユーザーのエンゲージメントや、類似ユーザーへのリーチが可能となります。
活用例としては以下のような方法があります。
- リターゲティング
アプリを一度インストールしたものの、一定期間利用していないユーザーに対して、再度アプリを利用してもらうための広告を配信する。
- 類似オーディエンス
既存の高価値ユーザーの行動データ(検索行動や購入など)を基に、同様の特性を持つ新規ユーザーをターゲティングする。
モバイルアプリオーディエンスの作成は、管理画面左上の「≡(MENU)」から「共有ライブラリ」の「オーディエンス」から行えます。
ただし、アプリ登録とSDK連携を行っている広告アカウントでなければ作成できません。
ポイント② クリエイティブでは視認性を重視する
広告クリエイティブの視認性は、ユーザーの関心を引き、行動を促す上で非常に重要です。
視認性の高いクリエイティブを作成するためには、以下のようなポイントをおさえる必要があります。
- シンプルで明確なデザイン
情報を過度に詰め込まず、伝えたいメッセージをシンプルに表現します。
- 高品質な画像や動画の使用
ユーザーの目を引く高解像度のビジュアルを使用します。
- ブランド要素の明確化
ロゴやブランドカラーを適切に配置し、ブランド認知を高めます。
- CTAの強調
「今すぐダウンロード」など、ユーザーに具体的な行動を促すCTAを目立つように配置します。
広告クリエイティブなどで、お悩みがある方は、ぜひデジマールまでお問い合わせ下さい。
ポイント③ カルーセル広告や動画広告を利用する
アプリのインストールやエンゲージメントの向上を目指す広告では、LPを作成せず、直接アプリストアに遷移させる場合が多いです。
そのため、広告のみでユーザーの興味を引く必要があり、そのような場合には、カルーセル広告や動画広告が有効です。
それぞれの広告の特徴は以下のとおりです。
- カルーセル広告
複数の画像を一つの広告内でスライド形式で表示できます。これにより、アプリの多様な特徴や複数の画面を一度に紹介することが可能です。
- 動画広告
視覚と音声を組み合わせて、ストーリー性のあるコンテンツを提供できます。短時間で多くの情報を伝達し、ユーザーの感情に訴求することができます。
ポイント④ アプリストアでの説明文や評価の改善
この点は、LINE広告に限らず、アプリマーケティングを実践する上で重要なポイントです。前述したようにアプリをPRする広告はLPを作成しないことが多いです。
そのため、アプリストアでの説明文や評価は、ユーザーがアプリを初めて知る際の「顔」となります。
魅力的で分かりやすい説明や、ポジティブな評価を多く集めることで、信頼性が向上し、ダウンロードやインストールの促進につながります。
SKAdNetworkとは?iOS14.5以降のLINE広告戦略
SKAdNetworkとは、Appleが提供するプライバシーに配慮したトラッキングツールです。IDFA(iOS端末用の広告ID)を使わず、どの媒体からどれだけアプリインストールが発生したのかを計測可能にしたツールになります。
(広告IDとは、ユーザーが持つスマートフォンやタブレットなどの端末ごとに付与される固有で匿名の識別子のことです。広告主は広告IDを用いてユーザーの行動を詳細に追跡し、広告の効果を測定しています。)
SKAdNetworkのメリット
iOS14.5以降、Appleはプライバシー保護を強化するため、広告のトラッキングを拒否しているユーザーからは、iOS端末用の広告IDであるIDFAを取得できないようにしました。
これにより、従来のように個々のユーザーを特定して広告効果を計測することが難しくなり、アプリ広告業界に大きな変化をもたらしました。
その代替策として登場したのが、Appleが提供するSKAdNetwork(StoreKit Ad Network)です。
SKAdNetworkの最大のメリットは、広告のトラッキングを拒否しているユーザーのコンバージョンも計測可能な点です。
SKAdNetworkの制限
以上のメリットがある一方で、SKAdNetworkにはいくつかの制限があります。
第一に、計測できるイベントに制限があります。
SKAdNetworkでは、インストールの有無や初回起動など、基本的な情報しか計測できません。ユーザーのアプリ内での詳細な行動やLTV(ライフタイムバリュー)などの深い分析は困難です。
第二にデータの遅延です。
イベント発生からデータの通知に最大で24時間の遅延が生じるため、リアルタイムの効果測定や迅速なキャンペーンの最適化が難しくなります。
LINE広告におけるSKAdNetwork対応
LINE広告ネットワークは、AppleのSKAdNetworkに対応しています。 LINE広告を利用してアプリのプロモーションを行う場合、SKAdNetworkを通じてコンバージョンデータを取得し、広告効果を計測することが可能です。
(参考:※5)
SDKの導入は複雑
LINE広告のSDK連携は、アプリキャンペーンの広告効果の計測精度を向上させ、より効果的な広告運用を行うために欠かせない要素の一つです。しかし、SDK導入には、SDKの選定、広告アカウンやアプリとSDKの連携、計測用URLの設定など様々な作業を行わなければならず、決して容易ではありません。さらに、iOSのプライバシー規制強化に伴い、従来の広告手法が通用しにくくなっているため、SKAdNetworkなどの最新の計測手法への対応も求められています。
それらの対応をすべて自社内だけで行うことは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。そのような場合、専門的な知識と経験を持つ広告代理店に依頼することが1つの解決策です。
LINE広告のアプリキャンペーンはデジマールにお任せ下さい。
デジマールでは、LINE広告の運用経験が豊富な専門チームが、SDK連携のサポートから広告最適化までをトータルで支援いたします。貴社のアプリマーケティングを成功に導くために、効果的なSDKの導入支援だけでなく、データ計測や最適なターゲティング設定のアドバイスも提供。さらに、最新のiOSプライバシー規制に対応した広告戦略の構築もサポートいたします。
デジマールの強みの1つは、広告運用コンサルチームとデザイナーチームの連携です。アプリマーケティングで重要となるクリエイティブもお任せ下さい。デジマールには、広告運用コンサルタントに加えてデザイナーも所属しています。
両者の強固な連携により、スピード感をもって高品質のクリエイティブを制作いたします。また、デザイナーもお打ち合わせに参加することができ、クリエイティブの微調整を効率的に実施することができます。
他のデジマールの強みなど、サービスの詳細については、以下からご覧ください。
※1:LINEヤフー for business メディアを登録する(アプリ)
※2:LINEヤフー for business アプリのインストールを計測する(SDK連携)
※3:LINEキャンパス 広告グループ設定のコツ(アプリインストールを増やしたい)
※4:LINEヤフー for business 広告を作成する
※5:LINE広告ネットワーク利用ガイド SKAdNetworkとの連携