「リスティング広告運用マニュアル」では、全13回にわたり、私たちデジマールがどのようにリスティング広告を運用し、お客様とコミュニケーションをとっていくのか、その全体像をお伝えしていきます。今回は第7回「リスティング広告の費用はいくら?」です。
この連載は、
- 代理店を利用したことがなく、どのようなサービスを受けられるのか知りたい方
- 代理店に委託していて、何かしら疑問を持っている方
- 代理店からの報告をもっと理解したい方
- リスティング広告運用を始めたい方
- リスティング広告の運用効率を上げていきたい方
に向けて、事前知識を包括的にインプットできる記事となっております。今回は、リスティング広告の費用の考え方を、具体的なシミュレーションを持ちながら解説していきます。
リスティング広告について、基礎を知りたい方は「リスティング広告とは?」の記事をご覧ください。
以下はシミュレーション結果のサンプルです。フォーマットの参考にしてみてください。
※本記事は、Googleパートナー・Yahoo!認定パートナーである、デジマール株式会社が執筆・監修しているものです。
リスティング広告の費用計算の基本的な考え方とは?
リスティング広告の費用を算出する際に使われる方法は主に2つあります。「1つの購入」に対しての広告費用を考えるのか、「1人のユーザー」に対して広告費用を考えるのかによってその算出方法は変わります。
「1つの購入」単位の計算方法、「1人のユーザー」単位の計算方法
「1つの購入」に対して広告費用を考える場合、広告費用は、
「1つの購入」あたり広告費用=(総売上ー総経費ー総利益)/売上数量
「1人のユーザー」に対して広告費用を考える場合、広告費用は、
「1人のユーザー」あたり広告費用=(総売上ー総経費ー総利益)/ユーザー数
となります。一見違いはないように見えますが、自社の商品・サービスによって使うべき計算式は変わります。それぞれについて見ていきましょう。
「1つの購入」に対する広告費用の計算とは?
まずは、「1つの購入」に対する広告費用をシミュレーションしてみます。この方法は、いわば、売上から必要経費と確保したい利益を引いた、残り金額を広告費に充てるやり方です。これはインターネットの運用型広告だけでなく、紙や電波といった既存メディアでも多く使われてきました。
サンプルを見てみましょう。
以下の表は、1つの購入あたりの平均売上金額、平均経費、利益金額です。
平均売上金額 | 平均経費 | 平均利益 |
10,000円 | 6,000円 | 2,000円 |
「1つの購入」あたり広告費用=平均売上ー平均経費ー平均利益
の式より、
「1つの購入」あたり広告費用=10,000ー6,000ー2,000=2,000(円)
広告費用は、1つの購入につき、2,000円が上限であると分かります。この数値で広告の成果をシミュレーションしてみましょう。
なお、この1つの購入における費用の上限額のことを、上限あるいは目標CPAと呼びます。CPAについては、以下の記事を参考ください。
「1つの購入」あたり広告費用が効果的な商品やサービス
この、「1つの購入」に対する広告費用の考え方が使えるのは、売上金額が大きい商品やサービスです。BtoCでいえば、不動産や中古車、BtoBだと、買い切り型のソフトウェア、コンサルティングサービスなどに限られます。継続利用を前提とする、低単価のECサイトやサブスクリプションサービスには不向きな考え方です。
例えば、契約金額200,000円のコンサルティングサービスを例に挙げてみましょう。各数値を以下のように仮定します。なお、売上金額が大きい商品やサービスと関連したキーワードのCPCは高くなる傾向があります。
CPC | クリック数 | CVR | リード数 | 成約率 | 契約数 |
500円 | 100 | 1% | 10 | 10% | 1 |
広告費用は、500×100=50,000(円)と分かります。
「1つの購入」あたり広告費用=平均売上ー平均経費ー平均利益
平均利益ー平均経費=平均売上ー「1つの購入」あたり広告費用
の式より、
平均利益ー平均経費=200,000ー50,000
平均利益ー平均経費=150,000(円)
とわかります。リスティング広告経由で、「1つの購入」当たり平均経費が15万円以下であれば、利益が見込めることがわかります。
上記は、CVR1%、成約率10%の想定で計算しましたが、Web経由のリードの契約割合は、電話やオフライン経由のリードと比べて成約率が低い傾向にあるといわれています。成約率は低く見積もったうえで広告費用は潤沢に確保するとよいでしょう。
「1人のユーザー」に対する広告費用の計算とは?
次に、「1人のユーザー」に対する広告費用の考え方を見ていきます。この考え方は、「1つの購入」あたりの広告費用の考え方とは相性の悪い、ECサイトやサブスクリプションサービスで用います。
「1人のユーザー」に対する広告費用を考える上で基本となるのが、「顧客生涯価値:LTV(Life Time Value)」の概念です。
LTVとは、「1ユーザーが生涯でもたらす売上、あるいは利益」のことです。1生涯で考えることが難しい場合は、1か月や1年といった特定の単位における1ユーザーあたりの売上、利益を考えます。
LTVを用いてECサイトの広告費用をシミュレーションしてみる
以下の表は、1年間の、1人のユーザーあたり平均売上単価、平均年間売上回数、平均年間経費、平均年間利益のサンプルです。
平均売上単価 | 平均年間リピート回数 | 平均経費 | 平均利益 |
5,000円 | 4 | 3,000円 | 1,250円 |
「1つの購入」に対する広告費用で考えると、
「1つの購入」に対する広告費用=5,000ー3,000ー1,250=750(円)
750円は広告費用としては不足があるといえるでしょう。そこで、ユーザー1人あたりの年間に利用できる広告費用を考えます。
「1人のユーザー」に対する年間広告費用=5000×4-3,000×4-1,250×4=3,000(円)
ユーザー1人あたりに年間で利用できる広告費用は、3,000円と分かります。
3,000円の広告費用で、単価5000円の購入を4回してもらうことで目標の利益額を立てることができます。リスティング広告はあくまで最初の1回から2回の購入の誘導のための施策であり、3回目、4回目の購入を促すのは、「顧客関係性管理:CRM(Customer Relationship Management)」を用いた「ファン化」「リピーター化」の施策です。CRMは、新規獲得ほど広告費用はかからないので、3,000円の広告費用は、1回目、2回目の購入のために投入することができます。
すると、年4回のリピートに対する1回当たりの広告費用は750円ですが、1回目、2回目の購入にのみ広告費用を使うとすれば、単純平均でそれぞれ1,500円の広告費用を投入することができると分かります。
LTVを用いてリアル店舗の広告費用をシミュレーションしてみる
リアル店舗のサービス予約などをリスティング広告の成果地点とする、美容院やマッサージ店においても、LTVの考え方を使うことができます。すなわち、リスティング広告で新規獲得した顧客が、平均いくらの購入(サービス利用)を年に何回してくれるのか、そこから経費や利益額を差し引いた値が、広告費用となります。
マッサージ店の広告費用を考えてみましょう。
平均売上単価 | 平均年間リピート回数 | 平均経費 | 平均利益 |
6,000円 | 2 | 3,000円 | 2,000円 |
「1つの購入」に対する広告費用で考えると、
「1つの購入」に対する広告費用=6,000ー3,000ー2,000=1,000(円)
1,000円は広告費用としては不足があるといえるでしょう。ECサイトと同じように、ユーザー1人あたりの年間に利用できる広告費用を考えます。
「1人のユーザー」に対する年間広告費用=6,000×2-3,000×2-2,000×2=2,000(円)
もし1回目の訪問で満足してもらい、次回以降の予約に使うアプリをダウンロードしてもらった場合どうでしょうか。次回以降の来店は広告費がかからないので、1回目の来店に2,000円まで広告費用を使うことができます。
リアル店舗の場合は、リピートのための施策がオフライン寄りになります。予約用のアプリダウンロードを促す、ポイントカード制度で再来客のメリットを示す、顧客ごとにカスタマイズされたサービスを行う、顧客と店員の関係性を良好にするなど、オンライン以上に複雑な要素が絡み合わせてリピート回数の増加に寄与します。
店舗ビジネスの場合、毎回広告経由で予約が行われるとそれだけ広告費がかさんでしまうため、どれだけ広告以外の経路から次回の予約を獲得するかがLTVを最大化するために大事な考え方です。
CVRを変動させて広告費用をシミュレーションしてみる
広告運用前からランディングページのCVRを当てることは不可能といえます。「1つの購入」「ユーザー1人」あたりの理想的な広告費用を算出した上で、目標とするコンバージョン数を獲得するにはどれだけの広告費用が必要か計算します。
CPC | クリック数 | CVR | コンバージョン数 | 総広告費用 |
50円 | 20,000 | 0.5% | 100 | 1,000,000円 |
10,000 | 1.0% | 100 | 500,000円 | |
6,666 | 1.5% | 100 | 333,300円 | |
5,000 | 2.0% | 100 | 250,000円 |
仮に100コンバージョンをそれぞれのCVRで獲得しようと思うと、同じCPC(クリック単価)でも、総広告費にかなりの差が出ていることがわかります。想定しているCVRによって成果の予測の精度が変わるため、CVRに幅を持たせてシミュレーションしておくことも大切です。
広告費用を抑えるにはどうしたらいいの?
前述したように、CVRによって、必要な広告費用は大きく変わります。広告費用を抑えるためには、運用の改善が必要です。今回はポイントを抑えつつ、詳細は以下の記事からご覧ください。
広告費を抑えるために、キーワードを見直す
リスティング広告は、キーワードで広告の配信対象を設定することができます。コンバージョンに結びついていないキーワードに広告出稿しているようであれば、それらのキーワードは除外設定したり、配信対象のキーワードから外したりすることで、広告費を抑えるだけでなく、CPCも改善が見込めます。
広告費を抑えるために、ターゲティングを見直す
リスティング広告は、キーワードのほかに、性別、年齢、地域、時間帯、興味関心(Googleのみ)などでターゲティングすることができます。
女性向けのサービス・商品なのに男性にも配信していたり、サービス時間外にも広告配信していると、無駄なクリックを量産してしまいます。ビジネスの形態に合わせて広告の配信を制限しましょう。
広告費を抑えるために、広告の品質を改善する
広告の品質は、GoogleおよびYahoo!広告が、掲載順位の決定のアルゴリズムに加えている概念です。
高いクリック単価を払い続けて広告を上位掲載するのは最適とは言えません。広告の品質を改善することで、費用を抑えながら広告の掲載順位改善を狙うことができます。
リスティング広告運用を代理店に委託するときの費用は?
リスティング広告を運用するうえで、より効率的に運用できるリスティング広告の代理店に委託することもあるでしょう。
リスティング広告を委託する際の料金形態としては、手数料制が一般的です。
業界の手数料の水準は20%と言われているので、仮に100万円分の広告費をリスティング広告に使いたい場合、
総費用=広告費×(1+手数料)
より、
総費用=1,000,000×(1+0.2)
総費用=1,200,000(円)
となります。
自社でマーケターを採用して運用してもらうか、代理店に委託するか、どちらが効率が良いかの参考にしてみてください。なお、代理店を選ぶうえで注意すべき点もあるため、委託するならば、代理店選びも広告運用のうちという意識で探してみるとよいでしょう。
まとめ
ここまで、デジマールの考えるリスティング広告の費用について見てきました。費用は多ければ多いほど成果がでるというわけではなく、お客様の目標値を達成するために必要な金額を準備することが第一です。
費用をどのように運用して成果を出すのか、が代理店の腕の見せ所です。シミュレーションをもとに様々なプランを考え、最適なものを選んでいく姿勢があるかを基準の一つに代理店を選びましょう。
また、デジマールでは、リスティング広告運用の無料相談を実施しております。
「リスティング広告を始めてみたい」
「リスティング広告の費用対効果をシミュレーションしてもらいたい」
といったリスティング広告のご相談については、「リスティング広告運用代行」をご覧ください。