全3回にわたり、リマーケティングの仕組みと今後、企業の対策について解説していきます。本記事はシリーズ第3弾「リマーケティング停止に向けた企業の対策とは?」です。

世界的なシェアを誇る「Google Chrome」がサードパーティーCookieのサポートを2022年に停止すると発表したことで、Cookieを活用したリマーケティングという手法を大々的に継続することは困難になりました。そのため、国内外でECサイトを運営するメーカーや企業がマーケティング戦略の修正を求められています。

実際、ネットにおける広告戦略の大半をリマーケティングに依存してきたという企業は少なくありません。それらの企業が何も打開策を見出すことなく2022年を迎えてしまうと、ECサイトによる売り上げは激減して企業の業績にも破壊的な影響を及ぼすことになるでしょう。

このように差し迫ったリスクがあることから、多くの広告担当者は2021年度中に効果的な代替措置を見出すため頭を悩ませています。

第1弾|リマーケティングの仕組みとは?

第2弾|リマーケティングって無くなるの?

第3弾|リマーケティング停止に向けた企業の対策とは?

コミュニケーションツールが不可欠

サードパーティーCookieを利用できなくなるということは、潜在的なカスタマーへのアプローチ方法が1つ失われるということです。ですから、ユーザーとのコンタクトを保ち、そのニーズを見極める別のメソッドを確立しなければなりません。

Cookieに関するサポートが終わるのはインターネット用のブラウザに関してのみであり、それ以外のメディアを通して企業がユーザーの情報を手に入れた場合には、そのパーソナルデータを活用してコンバージョンに繋がるようなアクションを起こすことが可能となります。

もちろん、個人情報保護の観点から、データ管理には細心の注意が必要になるとはいえ、この面で引き続き自由度が高いのは望ましいことでしょう。

SNSアプリを大いに活用していこう

SNSのユーザー登録が意味すること

ユーザー情報を手に入れるメディアとして大きな役割を果たすと考えられているのが「SNS」です。例えば、企業が公式アカウントとしてLINEを運用しており、そのアカウントに友達登録をしてくれたユーザーに関する個人情報は、企業が法律の枠内で自由に活用することができます。

TwitterやFacebookのフォロワー登録なども同様です。こうしたSNSアカウントにユーザー登録をするということは、その企業が提供している商品やサービスに一定の関心を持っていることを表しています。加えて、友達登録やフォロワー登録はユーザーが能動的にアクションを起こさない限り行われません。ですから、その時点では登録した企業に対してポジティブな印象を持っていると考えることもできるでしょう。

企業としては、登録時にユーザーから提供された年齢や性別などを念頭に置いてターゲッティングを行い、情報をコンスタントに発信していくことで、コンバージョンへ至る割合を高めることができるはずです。

SNSの普及

国内におけるスマートフォンの普及率は2020年の時点で77%を超えており、それに伴って各種SNSの利用者も非常に多くなっています。1つの端末に複数のSNSアプリをインストールしているという人も決して珍しくありません。そのため、SNSを介して登録をしたり、登録先のアカウントから情報を受け取ったりするというアクションは多くのユーザーにとってすでに普通のことになっているのです。

ですから、積極的にSNSを活用してアプローチをしていくということは、リマーケティング以降のマーケティング戦略において重要なポイントとなるでしょう。特に、LINEを始めとするチャット機能を備えたSNSアプリは、ユーザーと1対1でコミュニケーションを図ることが可能というメリットに加えて、ニーズをリアルタイムでキャッチできるという利点もあります。

SNSを利用したマーケティングの注意点

一方で、SNSアカウントを介したマーケティングにも注意すべきポイントはあります。例えば、Cookieを利用したリマーケティングと比較して、アプローチの対象となる母集団が小さいという点です。

リマーケティングの場合、基本的には運営するECサイトへアクセスしてくれたユーザー全体をターゲットとしてアプローチをすることが可能となり、ユーザー登録などをしていない場合でもコンバージョンへ繋がる可能性があります。

一方、SNSを利用する場合には、ユーザーから「公式アカウントへの登録」というアクションが発生しない限り、企業側はアプローチを行うことができません。そのため、コミュニケーションを図る対象が非常に限られてしまうのです。

また、友達登録やフォロワー登録を解除されてしまったり、アカウントをブロックされてしまったりすると、そこで企業からのアプローチは頓挫してしまいます。

魅力的なSNSアカウントを作成する

ですから、企業側には公式アカウントの認知度を高めることに加えて、アカウントを閲覧したユーザーに「登録してみようかな」と感じさせる魅力的なアカウント作りを行うことが求められます。

また、クオリティーの高い情報を定期的に発信しつつも、不快と感じさせない頻度でコンバージョンへと促す巧みなアプローチを実施することが必要となるわけです。

そのため、企業のSNSアカウントを管理する広告担当者には、ユーザーの視点も踏まえたバランス感覚の良さが要求されるということを覚えておきましょう。

Privacy Sandboxの動きについていこう

Googleが提唱するPrivacy Sandbox

Cookieを活用したリマーケティングが行えなくなることは世界的な経済活動の衰退に繋がるのではという懸念は少なくありません。そこで、Googleを始めとする多くの企業が新たなマーケティングの指針として「Privacy Sandobox」を提唱しています。

2019年8月から本格的に始まったこのプロジェクトでは、ユーザーの個人情報保護に重きを置きつつ、企業がマーケティングを継続するうえで必要な情報を手にできるようなプラットフォーム形成が行われています。

Privacy Sandboxの3つのポイント

Privacy Sandoboxにおいて重要視されているポイントは3つあります。1つ目は「透明性の確保」です。ユーザーの個人情報がどのように収集されたのかに関して、ユーザーが希望するタイミングで確認できるシステム作りを目指しています。

2つ目のポイントは「選択肢の提供」です。企業は個人情報の利用に関してユーザーに確認を行う義務を負い、ユーザーはどのような方法で個人情報が用いられることを望むのか、あるいは望まないのかを明示することができます。

3つ目のポイントは「ユーザーによる情報のコントロール」です。ユーザーが個人情報を提供する場合、その用途をどこまで許可するのか定めることができます。

これら3つの条件を満たすプラットフォームであれば、企業とユーザーのいずれにもベネフィットが多いWin-Winの関係性を構築できると期待されており、実際に開発が進められているところです。

ECサイトを始めとして、インターネットによるマーケティングを実行している企業およびマーケティングの担当者は、こうした動きにいつも目敏くあって、最新の情報に通じておくことが求められるでしょう。

法整備の流れを把握しておくことも大切

日本国内では個人情報の取扱いに関する法整備が急ピッチで進められており、2015年に続いて2020年6月にも大規模な法改正が行われました。これらの法律は2年以内に施行されることになっており、各企業はそのタイミングでしっかりと新たな法制度に準拠した体制を築いておく必要があります。

ですから、広報担当者は法務担当者と緊密に連携を取りながら、会社として取り組むマーケティング戦略が法に抵触していないかを随時確認することも求められるでしょう。

(データは2021年現在)

まとめ

リマーケティングが停止する2022年以降、Webマーケティングは大きく変化します。SNSでのユーザーとの関わり合いがより重要となり、ユーザーにとって魅力的な情報発信が必要となります。

Googleをはじめとするプラットフォーマーは、リマーケティングに代わる新たな技術を、個人情報保護を遵守しながら開発しています。また、その動きを追従するかのように各国で法律が制定されています。

マーケティングの潮流、SNSや広告のテクノロジーの進歩、法律の制定、この3つの視点を逃すことなく、最先端のマーケティングにチャレンジしていきましょう。