全3回にわたり、リマーケティングの仕組みと今後、企業の対策について解説していきます。本記事はシリーズ第1弾「リマーケティングの仕組みとは?」です。

ECサイトにとって重要なのは「訪問するユーザーの数」と「コンバージョン率」の2つです。サイトの見やすさや掲載されている情報のクオリティーを高めることで非常に多くの人がサイトを訪れたとしても、そこで販売されている商品やサービスを購入するという成果を獲得すること、つまりコンバージョンへ繋がらなければあまり意味はありません。

ECサイトを訪れる人のおよそ9割は何かを購入することなく、サイトを離脱するという統計があります。ですから、ECサイトを運営しているメーカーにとって、コンバージョン率をどのようにして高めていくかという点はマーケティングにおける要なのです。多様なビジネス手法が登場する中で、ベネフィットが多くコストパフォーマンスも高いマーケティングメソッドとして多くの企業から採用されているのが「リマーケティング」です。

第1弾|リマーケティングの仕組みとは?

第2弾|リマーケティングって無くなるの?

第3弾|リマーケティング停止に向けた企業の対策とは?

リマーケティングとは

コンバージョン率が高いリマーケティング

リマーケティングとは「管理するサイトから離脱したネットユーザーを追跡して、別のサイトにある広告用スペースに自社サイトの情報を表示させることで購買意欲を刺激する」という手法です。ユーザーにとっては関心を持っている商品が紹介されるため、気になって思わず広告を見てしまうというケースが少なくありません。

その広告をクリックすると、ユーザーは再び離脱したサイトへと戻ります。この場合、閲覧したい商品が明確に定まっており、購入意欲もかなり高い状態でサイトを訪れることになるため、通常のサイト利用者よりもコンバージョン率が圧倒的に高いという違いがあるのです。

様々な媒体で用いられるリマーケティング

「追従型広告」とも呼ばれるこの手法は、基本的なアルゴリズムがとてもシンプルであり、メソッドの導入や設定も比較的容易であるという強みがあります。そのため、業種や販売している商品・サービスに関わりなく、世界中の企業から主要なマーケティング戦略として注目されているのです。

一般的に、Google広告を利用して実施する追従型広告は「リマーケティング」と呼ばれ、それ以外のFacebook広告やYahoo!広告などを活用する場合は「リターゲティング」と呼ばれます。ただし、ベースとなっている仕組みに違いはありません。

リマーケティングの具体的な仕組みを知ろう

ファーストパーティーCookieとサードパーティーCookie

リマーケティングでは、「サードパーティーCookie」が用いられています。Cookieには、「ファーストパーティーCookie」と「サードパーティーCookie」の2種類が存在します。

Cookieは、閲覧したサイトからブラウザに自動発行される、パスコードのようなものです。ブラウザ、サイト(すなわちサーバー)の両方で同じパスコードを持つことで、ブラウザとサイトの情報を紐づけることができます。

「ファーストパーティーCookie」は、ユーザーが閲覧しているページと同じドメインのCookieです。例えば、ユーザーAがexample.comというページをブラウザで表示しているとき、ファーストパーティーCookieは「example.comと紐づけられたCookie」となります。

「ファーストパーティCookie」があることで、ユーザーがいったんサイトを離脱した後、再び同じページにアクセスした際にはスピーディーにサイトの情報が表示されるというメリットがあります。また、ログインやサインイン用のデータやパスコードなどもCookieと関連させて記憶させておくことができるため、作業高速化のサポート機能としても非常に優秀ということができるでしょう。

ファーストパーティークッキーとブラウザ、サーバーの関係

一方、「サードパーティーCookie」は、「ファーストパーティーCookie」以外のCookie、言い換えれば、example.comではなく、ads.comといった他のサイトに紐づくCookieです。

もちろん、保存されたCookieはブラウザの設定などから簡単に削除することができます。

サードパーティーCookieの追跡

サイトが発行したサードパーティーCookieは追跡することが可能です。そこで、多くのサイトでは、閲覧のために長時間滞在したユーザーや、アイテムをカートへ入れたものの購入手続きには至らなかったユーザーなどのCookieをトラッキングして、別のサイトを閲覧しているタイミングで自社の商品に関する広告を掲出して再びアプローチを行います。これがリマーケティングの基本的な仕組みです。

サードパーティーCookieとブラウザ、サーバーの関係

リマーケティング利用の注意点

リマーケティングの運用に関連して注意すべきポイントが2つあります。1つ目は「サイトを離脱したユーザーがその後訪れるすべてのサイトで広告を表示できるわけではない」という点です。ポータルサイトやブログサイトのように、リマーケティング向けの広告用スペースが用意されている場合のみ広告が掲出されます。

2つ目は「リマーケティング広告の運用には十分な数のターゲットが存在しなければならない」という点です。Google広告やYahoo!広告では、リマーケティングに関するターゲットリストの最低人数を定めており、その基準を満たさない場合にはトラッキングによる広告の表示や配信が行われません。

リマーケティングは数多くのメリットを有する

購買意欲のあるユーザーに広告配信できる

リマーケティングを多くの企業が採用しているのは、メリットが分かりやすいからです。例えば、「コンバージョンの取りこぼしを防ぐことが可能」という点が挙げられます。ECサイトを利用する多くのユーザーは少なからず購買意欲を持っています。とはいえ、予算などを考慮した結果、その時点では購入を見送るという人は珍しくありません。

また、他のメーカーが販売している機能がよく似た商品と比較してから改めて購入を検討したいというユーザーもいることでしょう。こうした潜在的なカスタマーへリマーケティングを行うことで、購買意欲を再び高めることが可能となります。

先述の通り、リマーケティングで表示された広告をクリックするユーザーはコンバージョンへと至る可能性がとても高いのです。ですから、コンバージョンの取りこぼしを防止するうえでリマーケティングは非常に効果的なメソッドということができます。

リマーケティングのコストパフォーマンス

「コストパフォーマンスが良い」という点もリマーケティングを利用するメリットです。一般的なWEB広告の場合、ある程度ターゲティングはできるものの、基本的にはすべてのネットユーザーを対象としたものとなります。そのため、広告の費用対効果(ROI)は総じて低くなります。

一方、リマーケティングの場合、すでにサイトを介して自社のサービスや製品と関わりを持っており、ある程度ポジティブな印象を持っている可能性が高いという前提があります。そのため、広告によるアプローチがコンバージョンへ繋がりやすく、コストパフォーマンスも高くなるという強みがあるわけです。

企業として広告費用を効率的に使用することができれば、SNSや動画サイトのCMなど別のメディアでも広告を掲出することが可能になります。その結果、認知度が向上することによりサイトへの訪問者が増え、さらにリマーケティングのターゲットが増えるという望ましい循環が生まれるわけです。

ですから、限られた広告予算で最大限のベネフィットを生み出したいと考えている企業やメーカーにとって、リマーケティングという手法はまさに適しています。

Cookieを介したリマーケティングに終焉が近づく

国内外で圧倒的なシェアを誇るブラウザ「Chrome」を提供するGoogleが2022年へ向けて段階的にサードパーティーCookieのサポートを終了すると発表しました。すでにApple社の提供する「Safari」など人気の高い複数のブラウザもCookieのサポートを終了しています。

その結果、これまでネットマーケティングの主流となってきたCookieによるトラッキングを活用したリマーケティングは、2022年を境に終焉へ向かうと予測されています。これにより、これまでマーケティング戦略の大部分をリマーケティングに依存してきた企業やメーカーにとっては、新たな広告戦略を見出すための大きな変革が求められているのです。

この点で、2021年は様々なアプローチを試すことができる絶好の準備期間となることでしょう。

(データは2021年現在)

まとめ

ここまで、サードパーティーCookieを用いたリマーケティングの仕組みを見てきました。リマーケティングは費用対効果が高く、設定も簡単なWebマーケティング施策です。一方で、このリマーケティングが使えなくなるという話題があることもわかりました。

次回第2弾は、「リマーケティングって無くなるの?」をテーマに解説していきます。

第2弾|リマーケティングって無くなるの?