今回は、リスティング広告における広告アカウント構成を簡単に説明した上で、デジマールが採用しているGoogle推奨のアカウント構成である「hagakure構成」について解説していきます。
リスティング広告について、基礎を知りたい方は「リスティング広告とは?」の記事をご覧ください。
※本記事は、Googleパートナー・Yahoo!認定パートナーである、デジマール株式会社が執筆・監修しているものです。
Google広告を構成する要素を知る
「hagakure構成」について解説する前に、Google広告のアカウント構成について要素ごとに役割を確認していきます。
キャンペーンの役割
アカウント構造のなかで最も大きい階層です。
予算、言語、地域、広告の配信先ネットワークなどは、キャンペーンごとに設定します。商品やサービスが異なる場合や、地域によって使う予算を分ける場合などには、キャンペーンを分けて作成します。
広告グループの役割
キャンペーンの配下に作られる階層です。
キーワードと広告を1つにまとめることで、広告グループでまとめられたキーワードに紐づいて広告が表示されます。また、
同じテーマやターゲットを持つ広告やキーワードをまとめたものです。広告グループのキーワード共通の入札単価を設定することができます。キーワードごとに入札単価を再設定することも可能です。
広告の役割
広告は、自社の商品をPRする文言のことです。広告配信先ネットワークによってその形式が異なります。リスティング広告であれば、拡張テキスト広告や、レスポンシブ検索広告などがあります。
キーワードの役割
キーワードとは、リスティング広告の配信対象を決定するために使用される単語やフレーズです。
登録したキーワードと、ユーザーが検索した語句がマッチしたときに、広告が配信されます。
目的のユーザーに適切なタイミングで広告を表示するには、広告グループで広告と関連性の高いキーワードを設定することが大切です。
hagakure構成の背景
Googleが推奨する「hagakure構成」は、キャンペーンや広告グループをシンプルにまとめることです。その効果は、
- 広告の表示回数(インプレッション数)を少数の広告に集約し、品質スコアの評価を高めやすくする
- 広告のA/Bテストのためのサンプルを増やし、テストの精度を高める
といったことが考えられます。
詳しい構成については後述するとし、まずはこの構成が推奨されている背景を探ります。
hagakure構成が推奨される背景
hagakure構成が推奨されている理由には、Google、Yahoo!が、検索エンジンでより快適なユーザー体験を提供するために、データを多く必要としているということがあります。
Googleは検索エンジンのユーザーが有益な情報を得ることを第一に考えます。そこで活用されるのがデータです。Googleは、過去の検索データを基に個々人に合った広告を表示しています。広告ごとのデータを基に、「この広告はユーザーにとって品質の高い、有益な情報である」と判断すれば広告は多く表示されますし、そうでなければ表示回数は減少するでしょう。いずれにせよ、広告の品質を測るにはデータが多く必要ということが分かります。
この広告のデータを収集し、ユーザーにとってより有益な情報に改善するために必要なのが「hagakure構成」です。
hagakure構成
先ほど説明したように、Googleが推奨する「hagakure構成」は、複数キーワード少数広告の広告グループを多数作成する構成です。Google広告のヘルプだと、1広告グループあたり5~20のキーワードを設定することを推奨しています。
「hagakure構成」と対照的な構成は、1キーワード1広告の広告グループをキーワードの数だけ作成する構成です。
hagakure構成
キャンペーン | |||
広告グループA | 広告グループB | ||
広告A-① | 広告A-② | 広告B-① | 広告B-② |
キーワード | キーワード | ||
キーワード | キーワード | ||
キーワード | キーワード |
1キーワード1広告
キャンペーン | |||
広告グループA | 広告グループB | 広告グループC | 広告グループD |
広告A | 広告B | 広告C | 広告D |
キーワードA | キーワードB | キーワードC | キーワードD |
hagakure構成の優位点
Googleが「hagakure構成」を推奨する一番の理由は、データを蓄積する上での優位性です。多くのキーワードを少数の広告に集約するため、1広告あたりの表示回数が増加します。1広告あたりの表示回数が増えれば、広告の質を評価するためのデータ蓄積がより早く進みます。
広告の質を早く評価することは、検索結果の素早い改善につながるので、Googleはデータ蓄積に優位性のある「hagakure構成」を推奨するのです。
hagakure構成のメリット
「hagakure構成」は運用者にとってもメリットがあります。まず、広告の数が少ないうえにデータが蓄積しやすいので、広告の追加やテストを効果的に、数多く行うことができます。結果として、広告の品質スコア改善につながり、CPCの抑制も見込めます。
次に、広告表示の可能性が広がります。部分一致のキーワードを自動入札で登録していれば、思わぬクエリでコンバージョンを獲得したり、潜在層にもリーチしたりなど、想像の範囲外に広告が波及することがあります。
hagakure構成のデメリット
「hagakure構成」にはデメリットも存在します。1つ目は、部分一致のキーワードの運用難易度です。前述した「部分一致のキーワードを自動入札で登録」することは、インプレッションやクリックが成果の出にくいクエリに配分されるリスクもはらんでいます。自動入札の場合キーワードごとに入札調整はできないため、結果として広告グループ内の予算配分最適化ができない可能性が高まります。
また、一つの広告グループが多くの種類のキーワードを抱える構成だと、レポート作成も手間がかかります。どのキーワードに対してどのクエリが適応し、どのような成果だったのかを確認することが難しくなります。広告グループの成果を把握することはできますが、キーワードごとの動向を確認することに時間がかかるでしょう。
hagakure構成を採用しない場合
「hagakure構成」を採用しない場合の代替案に「1広告グループ1広告1キーワード構成」が挙げられます。この構成は、キーワードごとに広告を作成するため、細かな表現の調整ができます。しかし、「アドカスタマイザー」や「広告自動作成機能」などで広告の最適表示が進んでいることを考えれば、まずはこれら機能を試してみることで大幅な工数削減につながる可能性があります。また、広告が細分化されると表示回数が減るため、品質を評価するのに十分なデータを得ることも難しくなります。
また、この構成では、キーワードごとに細かな入札単価調整が可能です。部分一致の成果が見合わない場合は入札単価を下げることで対応できます。一方で、自動入札では蓄積したデータを基に時間帯やデバイスなど様々なシグナルを基に、目標に合わせた広告表示をします。一つ一つのキーワードにそれらの設定をするのは不可能ともいえるので、自動入札に頼る価値はあるでしょう。部分一致のキーワードについても、絞り込み部分一致で入稿するなどマッチタイプで調整する方法もあります。
デジマールにおけるアカウント設計
デジマールでも、Google推奨の「hagakure構成」を採用しています。ここからは、キャンペーンや広告グループ単位でどのようなルールを設けているのかを詳しく解説していきます。
キャンペーンは主に「指名キャンペーン」と「NONブランド(ミドル)キャンペーン」の2つに分類されます。それぞれについて解説します。
指名キャンペーン
指名キャンペーンの構成
指名キャンペーン | |
広告グループ | |
ランディングページ | |
広告表示オプション | |
広告① | 広告② |
キーワード | キーワード |
キーワード | キーワード |
キーワード | キーワード |
指名キャンペーンは機会損出、すなわちインプレッション損失を抑えるために、考えうるキーワードは全て入稿します。基本的には指名キーワードが含まれる検索にのみ広告表示したいため、「完全一致」や「フレーズ一致」といった比較的クエリの広がりにくいマッチタイプを採用します。
基本的には広告はABテストのために2つ、LP1つを準備して、指名キーワードの検索に表示します。広告表示オプションも1つ準備します。
NONブランド(ミドル)キャンペーン
NONブランドキャンペーンの構成
キャンペーン | |||
広告グループA | 広告グループB | ||
ランディングページA | ランディングページB | ||
広告表示オプションA | 広告表示オプションB | ||
広告A-① | 広告A-② | 広告B-① | 広告B-② |
広告カスタマイザA-① | 広告カスタマイザA-② | 広告カスタマイザB-① | 広告カスタマイザB-② |
キーワード | キーワード | ||
キーワード | キーワード | ||
キーワード | キーワード |
指名キーワード以外のキーワードでの広告表示を狙うキャンペーンです。なぜミドルキャンペーンという別名があるかというと、検索ボリュームがそこまで多くないキーワードを登録するためです。基本的に検索語句そのものの認知度が低かったり、複数語句が掛け合わさった検索語句であると検索回数が少なくなり、ミドルワードやテールワードに分類されるようになります。
NONブランド(ミドル)キャンペーンがそのような構成になっているのか見ていきます。
キャンペーン
予算管理が必要な場合のみ、キャンペーンを分けて作成します。予算が一緒な限りはキャンペーンを統一し、広告グループを分けることでキャンペーン目標を達成するにふさわしい広告を、広告媒体側で自動選出してくれます。
広告グループ
広告グループを分ける基準は、LPにあります。広告ごとに最終URLを決定しているため、LPが違う場合、広告グループを分ける必要があります。また、LPが違えば訴求内容も異なるので、広告グループ単位で広告表示オプションを設定しておくと思わぬ事故を防ぐことができます。
広告
汎用的な広告を1つ作成します。ただし、広告はABテストを行うことで改善していきますので、同じ訴求内容で表現の違う広告を2種類以上準備します。広告カスタマイザを使うことで、クエリごとに広告の内容を変更することができるため、キーワードごとに異なる広告を作る必要はありません。
キーワード
キーワード登録の基本は、検索ボリュームがは少なくないが、競合性の低いキーワードを取り逃さないことです。もちろん予算が多ければ検索ボリュームが多く、競合性の高いキーワードも含めて登録します。
例えばスニーカーを売っている会社が広告を出す場合、「スニーカー」というキーワードを登録すると広告の表示回数が過多になり、かつ競合性が高いため、入札単価も高くなりがちです。費用対効果を高めるには、どんな検索をした人に広告を表示したらクリック率やCVRが上がるのか仮説を立てたうえでキーワードを登録することが重要です。基本的にはキーワードを掛け合わせ、部分一致や絞り込み部分一致で登録します。もちろんキーワード自体の認知度が低い場合はミドルワードに該当しますので、1キーワードを部分一致で登録することもあります。
たくさん掛け合わせワードを登録する習慣も過去にはありましたが、現在は、検索語句が多様化しており、すべてを予想しきることは困難です。hagakure構成で最小限の部分一致、絞り込み部分一致キーワードを登録し、予想もつかないような検索語句に出会うことがリスティングの醍醐味です。一方で、お客様のビジネスと関連性の低い検索語句に関してはきちんと除外設定をして対策をするということも求められます。
まとめ
ここまでGoogleの推奨するアカウント構成「hagakure構成」について見てきました。「リスティング広告のアカウントはユーザーが作る」という格言があります。この格言は、ユーザーの検索行動に合わせて登録するキーワードを柔軟に変化させよということを示唆しています。ユーザーの検索行動を把握するにはデータを集めるアカウント構成が必要であり、それが今回紹介した「hagakure構成」というわけです。
広告の自動入札、自動表示が進む昨今において、データ蓄積に優位性のあるアカウント構成は必須です。推奨の構成を参考にしながら自社のビジネスに沿ったアカウント構成を探していきましょう。
デジマールでは、リスティング広告運用の無料相談を実施しております。
「リスティング広告を始めてみたい」
「最適なアカウント構成でリスティング広告を運用してほしい」
といったリスティング広告のご相談については、「リスティング広告運用代行」をご覧ください。