LINE広告の予算設計

松葉駿平

line広告にはどれぐらいの予算がかかるか

月間のアクティブユーザー数が8000万人を超えていると言われる国内最大規模のSNS、line。そこに広告を出すわけですから、絶大な宣伝効果も期待できます。ただ多くの人の目に触れる宣伝方法であればあるほどお金がかかる、というのが世の鉄則です。規模の大きなビルや駅に宣伝を出すのにどれぐらいのお金がかかっているのか、と考えるとLINEでマーケティングを行う際にもお金がかかるのではないか?と不安になる人も多いでしょう。

インターネットを活用したマーケティングの場合は予算がそれほどかからない点、また柔軟な料金設定ができる点などに特徴が見られます。LINEの場合も多くの人が利用している場所で宣伝を行うからといって、必ずしも多額の費用が必要というわけではありません。ただ、一方でどれぐらいのお金をかけてマーケティングを行っていく気があるのか、どの程度までマーケティングを行うのか、よく検討した上での判断も必要になってきます。お金をかければ成功するというわけではなく、かといってガジェットを押さえればそれだけ費用対効果が高くなるというわけでもないからです。

こうしたオンライン上のマーケティングでは予算の下限、上限がはっきりと定められていないことが多く、line広告においても同様です。それは入札によって決まるため、広告ごとに料金が異なるためです。

以前LINEで提供されていた広告サービス(LINE Ads Platform)では最低出稿予算というものが設定されており、100万円が必要でした。つまり、最低でもこの金額を用意したうえで「どこまでお金を出すか」ということになっていたわけです。しかし2017年になってこの設定が撤廃され、下限が存在しなくなりました。つまり、現在では柔軟な価格設定で宣伝を出すことができるのです。

まず、広告を出す場合には入札に参加する必要があります。簡単に言えば「ここに宣伝を出すことができるならこれくらいのお金を出す用意がある」と入札したうえで、もっとも高い金額を設定した広告主が実際に宣伝を利用することができるようになる方式です。

これはテレビCMにも同様のことが言えますが、時間帯や場所によって多くの人の目に触れる、話題になりやすい宣伝とそうでない宣伝が出てきます。当然宣伝効果が高いと見なされる広告枠には多くの人が載せたいと希望するわけで、入札金額も高くなっていきます。LINEの側としてはここで大きな収益を挙げる機会となるわけですから、宣伝を出す側としては「この枠のためにどこまでお金を出すか」というのが大きな分かれ目となるわけです。

課金方式について確認しておこう

実際にどれぐらいの予算が必要になるのかを知るためには、課金方式について確認しておきましょう。LINEではおもに2つの課金方式を採用しています。

まずひとつ目が「クリック課金(CPC)」と呼ばれるもので、載せた宣伝がユーザーによってクリックされるたびに課金される仕組みです。アフィリエイトの逆バージョンと言えるでしょう。クリックされた段階で宣伝効果が得られたと判断されるわけです。

もうひとつはインプレッション課金(CPM)と呼ばれるタイプで、こちらは載せた宣伝が表示された回数に対して支払いが発生する方式です。表示された回数が多ければ多いほど多くの人の目に触れ、宣伝効果が得られたと見なされる方式です。なお、LINEでは表示回数1000回を単位にして単価を設定しています。

ですから、まずどちらの方法で宣伝をするのかを決めた上で、入札価格の予算を決めていくことになるわけです。その際には最低入札価格というものが存在しており、そこからどれだけ上乗せするかがポイントになってきます。

この最低入札価格では静止画による宣伝と動画による宣伝で設定が異なっています。前者の場合はクラック課金では24円、後者の場合はCPMで400円となっています。

ポイントとなるのは、あくまで支払いが発生した段階で費用がかかる点です。ですから極端な話、初期費用はゼロでもlineに広告を載せることができるわけです。問題なのは実際に課金が発生した時に支払うことができるか、コストの負担に耐えられる範囲内で宣伝を続けることができるかです。

マーケティングの場合、費用対効果を把握しにくいという難点もあります。宣伝にコストをかけたからといってそれが具体的にどの程度売上・業績アップに結びついたか、その因果関係を把握するのはなかなか難しいものです。LINEのような課金タイプの宣伝では、業績との関係を把握できないまま、どんどんコストばかりがかさんでしまう可能性も出てきます。初期費用ゼロでもできるからといって低予算でLINEマーケティングができるわけではなく、ランニングコストを意識した上での検討・計画が必須となっています。

なお、課金タイプにはもうひとつ、「友だち追加課金型」というタイプもあります。こちらは宣伝を通してユーザーが自社のLINEアカウントを友だちとして登録したときに料金が発生する形式です。クリック課金型・インプレッション課金型とはかなりタイプが異なる仕組みなので、別枠で検討する必要も出てくるでしょう。単に宣伝を多くの人に見てもらうだけでなく、ユーザーを友だちとして獲得することができる点では非常に高い効果が見込めるわけですが、その分コンスタントに友達を獲得できるのか、はっきりとした成果が求められる部分も出てきます。よく店舗が行っているように友だちに登録すると割引やクーポンがゲットできるといった取り組みが必要になってくる部分もでてくるでしょう。そうなるとLINEに宣伝を出すためにかかる費用だけでなく、より広い意味でのコスト管理が必要になってきます。

入札金額は宣伝を掲載する枠が重要になってくるだけでなく、ジャンルによっても差が出てくるでしょう。関心が高いジャンル、話題になっているジャンルほど入札金額が高くなる傾向が見られます。例えば美容の分野でエイジングケア商品が注目を集めている場合には、関連する商品・サービスを提供している会社が盛んにターゲティングをしたうえで宣伝を行うようになりますから、良い枠の入札金額が高くなる傾向が見られるのです。

ただ、この点に関してはNGのジャンルもあります。どれだけ注目度・関心が高くても出稿できないジャンルもあるのです。もっともわかりやすいのがアダルト関連ですが、それ以外にもさまざまなジャンルに制限が設けられています。

代表的なところでは宗教関連、ギャンブル関連(ただし公営のくじなどの例外もあります)、出会い系、美容整形をはじめとした医療系、介護系などです。注意したい分野では、オークションやタバコ、避妊具などの産経用品、情報商材なども含まれている点です。これからLINEでマーケティングを行おうと思っている場合、あるいは多彩な商品・サービスを手掛けている場合には、そもそも宣伝を出稿できるかどうかを見極めておくことも大事なのです。

さらにもうひとつ注意したい点では、宣伝に記載する文言などに制限が設けられるジャンルもあることです。通販サイト、古物商、アルコール飲料、コンタクトレンズなどです。どうしてもインパクトのある宣伝を出そうと思って過激・過大な表現をしてしまうと、こうした問題に引っかかってしまうこともあるので気をつけましょう。できるだけ宣伝効果を高め、コストを回収するような宣伝内容が求められる一方、その意識が強すぎると思わぬ失敗をしてしまうこともあります。

入札は2種類の選択肢がある

この入札ですが、手動入札と自動入札の2種類の方法が用意されています。前者はその名前の通り入札の際に運用者が自分で、上限となる金額を入力しながら参加するものなのに対して、後者は入札価格をシステムが自動的に調節する方式です。

自動入札の場合、入札の際に毎回自分で参加して金額を設定する必要がなく、しかも予算の範囲内で宣伝枠を獲得しやすいといったメリットがあります。「システムに任せるなんて不安」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは機械学習によって最適な判断ができるよう入札調節ができるようになっています。機械がこれまでの配信のデータを参考にしたうえで目標とする単価に近づけるために、入札調整を行うことができるのです。LINEではこちらの方式を推奨しています。

基本的には自動入札を前提にしたうえで、ケースバイケースで手動入札を導入するのが基本的なスタイルとなるでしょう。

オプションの内容もチェックしておこう

line広告の特徴として、オプション機能が豊富に用意されている点が挙げられます。通常の配信に加えて、さらにさまざまなオプションで宣伝効果を高めることができるのです。ただオプションを利用するためには追加料金が発生するケースがあるうえ、定められた出稿金額の基準を満たしていることが大前提となっています。低予算で済ませようとするとこうしたオプションを利用できずに期待したほどの宣伝効果が得られない、といった可能性も出てくるわけです。

用意されているオプションの内容としては、まず「リーチ&フリークエンシー」が挙げられます。これはタイムラインの広告に月に1回以上接触しているユーザーに優先的に広告を配信することができる機能です。つまり積極的に広告を見ている人、興味を持っている人に宣伝を届けることで、より高い効果を目指すことができるわけです。ユーザーの中には宣伝にもしっかり目を向ける人もいれば、完全にスルーして人のタイムラインだけを見るという人もいます。前者に優先して配信すれば、同じ人数に配信した場合でも効果が高くなると考えるのはごく自然なことでしょう。ただし、このオプションは最低出稿金額が500万円からに設定されているので、かなり十分な予算を確保したうえでの利用が大前提です。

それから「ブランドリフトサーベイ」は、「ブランドリフト」と呼ばれるブランドの認知度、高感度、興味関心などの向上を示す指標です。ユーザーに対して広告主に対するアンケートを行い、どれだけ関心をもってもらえているか、宣伝することによってブランドイメージの向上が得られたのかといったことを可視化できるデータで確認することができます。先ほども挙げた費用対効果を確認するという点でも優れていますし、今後のマーケティングのアプローチを検討する上でも良いデータになるはずです。ただし、こちらは広告費と調査費用合わせて600万円からとなっています。

ほかにもさまざまなオプションが用意されていますが、これらを利用する場合には最低でも500万円程度のガジェットを確保しておくことが大前提となるでしょう。利用できるだけのガジェットを用意できるかで、LINEでのマーケティング方法に違いが出てくことになりそうです。

どれぐらいのコストがかかるのか?

こうして見ると数百万円単位の予算が必要ではないか?と思う方も多いかも知れませんが、もちろんそのようなことはなく、低く抑えようと思えば月に1万円程度でも行うことができます。ただ確実に宣伝効果を得たいなら、最低でも月数十万円単位の予算はほしいところです。

なお、費用に関しては自分たちですべて行うか、代理店に依頼して行うかによっても違いが出てきます。当然自分たちで行う方が安くすむわけですが、会社全体でオンラインマーケティングのノウハウを蓄積しているか、必要な知識・スキルを備えたスタッフがいるかどうかでかなりの差が出てしまいがちです。業務にかかる時間や労力がもたらすコストも見逃せません。

では、代理店に依頼する場合にはどの程度のガジェットを用意するべきでしょうか?あまり安く設定すると代理店側が受けたがらず、また受けても十分なサポートを行ってくれない傾向が見られます。全体的な相場として月額30万~50万円程度でないと、代理店に依頼して効果的なマーケティングを行うのは難しいとも言われています。なお、代理店に依頼した場合には月額料金に加えて、20%程度の手数料も発生するので注意しましょう。

ですから、個人経営の店舗や個人事業者の場合は、月額数万円程度からはじめてもある程度の効果が期待できますし、はじめてLINEでマーケティングを手掛けてみる場合にも少ない金額からはじめてみるのはよいでしょう。ただ本格的に知名度アップやサイトのアクセス数アップを期待したいなら、やはり月額数十万円、できれば100万円程度は確保しておきたいのが現実的な数字です。LINEだけでなく、さまざまなプラットフォームでマーケティングを行うケースも多いでしょう。どこまでマーケティングに費用をかけられるか、そのうちどれぐらいLINEに振り分ける気があるのか、よく検討した上でオプションを利用するかどうかなども踏まえて、最終的な判断を下すようにしましょう。

趣味は茶道と料理。

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