Facebook広告の運用引継ぎ

松葉駿平

広告の運用管理は、ずっと同じ担当者が続けてできるとは限りません。異動や離職などに伴い、担当を引き継ぐケースもあるでしょう。広告にもさまざまな種類がありますが、facebook広告のアカウント運用の引き継ぎに関してぜひ押さえておきたいポイントを詳述しますので、引き継ぐことになった方はチェックしておいてはいかがでしょうか。

facebook広告運用の現状の理解と把握

引き継ぎについて詳細を検討する前に、まず与えられている現在の状況をしっかり把握することが大切です。facebookの広告ではおもにどんな商品やサービスを扱っているのか、facebookに広告を出す目的は何なのか、また、いくらぐらいの予算があるのかといった項目は、ぜひスプレッドシートなどを作ってわかりやすくチェックしておきましょう。自分でわかるところは自分で埋め、わからないところは前担当者や関係者に聞いてください。こうやって大枠を理解し、できれば引き継ぎの概要ぐらいは自分の口で説明できるようになりましょう。

facebook広告運用で役立つ3C分析

自社だけでなく、市場全体や競合他社についての理解を深める分析方法に「3C分析」というやり方があります。「3C」の「C」とは、「Company(自社)」、「Customer(顧客)」、「Competitor(競合他社)」のことです。

自社の分析

まずは最初の「C」、自社の分析から始めましょう。自社について分析しろと言われても、多くの人がやってしまうのが、競合他社の製品やそのスペック、または、顧客のニーズなどの詳細にこだわってしまうことです。そういうことも大切ですが、まず自社についてじっくり見直すことから始めてください。

広告で打ち出したい自社の商品やサービスとは、そもそもどんな性質のものなのか、そのターゲットはどんな層なのか、また、ターゲットのどんな悩みや課題を解決できるものなのかといったことを分析します。この分析が疎かになると、参加する必要のない値下げ競争などにあくせくすることになるなど、焦点のズレた結果になってしまいがちです。

顧客の分析

自社の分析の次は、顧客と、顧客のいる市場環境について分析します。広告でアピールしたい自社の商品やサービスによって、ターゲットとなる顧客のどんな問題が解決できるのでしょうか。まずはそれを明確にしましょう。

次に、市場の分析ですが、その時に大切な視点が以下の2点です。

まず大切なのがマクロな視点であり、市場全体を見渡してその規模、動態、規制や法の変更などを把握します。統計データを見るとこうした俯瞰的な要素は確認できるでしょう。

マクロな視点に対してミクロな視点も同じく大切です。業界の規模、市場の成長性、潜在顧客数等が挙げられるでしょう。facebook広告であれば、クリック数やクリック単価などが指標になります。

以上の二つの視点を持ち、顧客を具体的に分析していきます。顧客像を具体的に把握するには、可能な限り想定する顧客に近づくことです。自ら商品やサービスを購入し、自分で顧客体験をしてみるのもよい方法でしょう。それができない場合は、身近にターゲット顧客に近そうな人物を探してみましょう。過去のユーザーアンケートの結果なども参考になります。

競合他社の分析

自社、顧客と分析できたら、次に競合他社の情報についても分析します。分析するにはまずそのための情報が必要ですから、競合他社の商品やサービスにどんなものがあるかとことん洗い出してみましょう。facebook広告で宣伝されている商品やサービスで検索してみて、それらと連動して結果に表示されるものをピックアップしていくと絞り込めます。

競合となる商品やサービスが定まったら、それについての情報を集めます。十分な情報が集まったら、自社を分析するのと同じ尺度でそれを分析していきましょう。自社の分析に使用した項目だけでなく、追加できる項目があるなら追加してください。分析項目は必要があれば増やしてかまいません。その増やした項目について、改めて自社を分析してみましょう。

こうやってそれぞれの項目について自社と競合他社とで比較した時、何が自社の方が優れ、何が他社の方が優れているでしょうか。これを把握することがプロモーション・キャンペーンでは大切です。

必要ないことがわかる3C分析

上記のような3C分析をやってみると、これまでやっていたことのなかに、特別やる必要性が感じられないことがあることに気づくことがあります。このように、不要なことが明確になる分析は良い分析です。自社の有利な点と思っていたところが実は他社の方が秀でていたり、これまでそれほど力を入れていなかった点が顧客のニーズであることがわかったりといった結果になると、優れた分析ができたと考えてよいでしょう。その結果を、facebookの広告アカウントに反映させてください。

facebookで宣伝する商品やサービスについての理解

次に宣伝する商品やサービスについての理解です。できれば、先ほども述べたように自ら購入できるものは購入して体験してみるのがよいでしょう。そうすれば、どんな点を他の商品と比較して購入を決断するかという実際の顧客と同じ視点が獲得できます。

ただ、BtoBのサービスなど、自ら体験しにくい性質のものもあるはずです。そういう場合は、実際にそのサービスを必要とするポジションにある人にインタビューしてみるという手もあります。たとえば経理システムのことなら、経理担当者に業務上の課題などをヒアリングするなど良い方法です。可能なら、自社のクライアントにも意見を聞かせてもらいましょう。

以上のようにさまざまな方法で自社の商品やサービスについての理解を深めることができたら、単にユーザーをコンバージョンさせることばかり考えるよりも、より効果的なアプローチができるようになります。どんな課題や悩みを抱えた人がこの商品を買うのか、それで、その商品は実際にそうした悩みを解決できるものなのか、といったことの理解を深めて、自分でも具体的な説明ができるようにしておくと、引き継ぎの後もうまく広告アカウントを運用していけるでしょう。

facebookの広告アカウントの確認

自社の現状理解、市場や競合他社、顧客の状況などを把握、さらに、自社の商品やサービスについても深く理解できたら、今度は実際にfacebookの広告アカウントがどのような設定になっているのかを確認していきます。

最初の現状把握の段階ですでに確認しているポイントもあるはずですが、詳細までじっくり確認するのはこの段階での方がよいでしょう。なぜなら、最初からアカウントを見ても、細かい部分ばかり気になって、全体がどうなっているかまではなかなか把握しづらいからです。

コンバージョンが最も獲得できている広告は何か、それはどのように配信されているかを図や表などにして可視化するとわかりやすいです。特に、引き継ぎを行うのが複数人の場合は、こうして理解度を共有しておく方が話が進めやすくなります。

facebook広告のリンク先ページの確認

広告に埋め込まれたリンク先のページがどんなページなのかを確認しておきます。プロモーションにおいてはランディングページが大切ですが、ターゲットごとに異なるページをリンク先に表示するようにしているのであれば、その違いを押さえておくことがより大切です。facebook広告アカウントの場合、広告タブで「リンク」を列に表示、そこからテーブルデータのエクスポートにより一覧が確認できます。この際、現在は設定していないものの、今後のリンク先ページに使えそうなページがあるかどうかも確認しておきましょう。もし見つかれば、その後の広告運用にとって、選択肢が増えるだけ幅が広がることは確実です。

アピールポイントの確認

広告で何を最もアピールしているのかを確認します。価格なのか、使用感なのか、それとも利用者数や継続率なのかなどの点を確認しておき、過去に試したアピールポイントとどのような違いがあるかもチェックしておきましょう。これまでに試したなかで何が最も効果が高かったのか、まだ試していないもののなかで何が高い効果が期待できそうかといったことがわかるでしょう。

過去のfacebook広告アカウント運用状況の振り返り

現状については、ここまでの手順でだいたいのことは確認できたはずです。その知識を前提に、過去の運用状況について振り返ってみましょう。振り返る際のポイントは、外部要因と内部要因を具体的な数字によって確認することです。アカウントの過去のレポートを見ながら、特にコンバージョンが増えた時期、もしくは逆に減った時期があることがわかったら、それは何が原因だったのかということを前担当者に確認しておきます。

現在のアカウントの状況は、過去の積み重ねによるものです。過去に行ったイベントや施策の結果が現状につながっています。それを引き継ぐことになった人が新しい視点で見ると、「もっと良い方法があるのに」と思うこともあるでしょう。ただ、それはこれまでの担当者もわかっていて、あえてできていない事情がある可能性もあります。そういう数字では見えない部分のことまでしっかり把握しておくことが大切です。

ルールの確認

これまで運用されてきたfacebook広告アカウントは、自社でやりたいことや顧客のニーズに基づいて作り上げられてきたものです。独自のルールができあがっていることもあります。たとえば、一般的な広告運用では問題ないことでも、何らかの事情があってこのアカウントではできないというケースもあるものです。そういうことも引き継ぎに当たってはぜひ把握しておくべきでしょう。

たとえば、競合他社とかぶるために特定のキーワードは使わないというルールがあるかもしれませんし、同じような理由で広告に掲載する文章に使用しないことが決まりになっている表現やフレーズがあるかもしれません。ただ、こうしたこれまでルールとして運用されてきたことが、もはや通用しなくなっているということもあり得ます。前担当者の認識を確認し、疑問がある時は解決しておきましょう。

引き継ぎは改善のチャンス

facebookに限らず、ある広告アカウントがどのようなパフォーマンスを示しているかは、それを運用している企業の実力によるところが大きいです。これまで安定して運用してこられたのなら、それを維持していくことも大切ですが、前担当者からの引き継ぎは新鮮な視点で見る良い機会ですので、これまで見過ごされてきたような問題や課題が発見できるチャンスでもあります。それが発見できれば同時に解決できるチャンスもあるということで、より良い広告運用につなげられる可能性があります。

これまで当たり前のこととしてやってきたことが、新しい視点から見ると、「ここをこうすればもっと改善できるのに」とわかることもあるでしょう。そういう気づきこそが大切ですので、疑問や違和感などを覚えたことは記録しておきましょう。のちほど、その時の気づきが新たな改善策のヒントになることもあります。

自社での運用が難しい場合は外部の代行会社に引き継ぎまでの運用をお願いする方法もあります。

通常はfacebookの企業ページは自社で運用していくものですが、何らかの事情や理由により、すぐに新しい担当者に引き継げないということもあるでしょう。たとえば、自社にリソースが少なく、広告運用について知識を持つ担当者をすぐに用意できないなどという場合です。また、これも人手不足により、他業務と兼任しなければならず、広告アカウントの運用に専念できる人がいないというパターンも考えられます。

そういう場合は、外部の運用代行会社に依頼することも検討してはいかがでしょうか。代行会社に依頼するとは、今後永遠に代行してもらうという意味ではありません。次の担当者の準備が整うまでの短期間でも代行してもらえる会社はあります。また、完全に任せてしまうのではなく、自社のスタッフが手順やノウハウを把握し、独力で運用していけるまでのサポートとして利用するというような方法もあります。

いずれにせよ、facebookの広告運用を任せられる代行会社はたくさんありますので、自社の事情やニーズに応じてそうしたサービスを上手に活用してはいかがでしょうか。

趣味は茶道と料理。

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